「子どもたちの一生のお守りに」アタッチメントと性教育をつなぐ実践

ベビーマッサージとの出会いから始まった、アタッチメントの学び

原井有加さんの講演の様子

滋賀県を拠点に「0歳からのお守り性教育」を主宰する原井有加さんは、看護師としての専門知識とアタッチメントの学びを活かし、乳幼児期からの包括的性教育を保育・教育・子育ての現場へ届けています。包括的性教育とは、体の仕組みだけでなく、自分や他者の心と体を大切にすること、人との関係性などを幅広く学ぶ教育です。

もともとはNICU(新生児集中治療室)などで看護師として勤務していた原井さん。出産を機にベビーマッサージと出会い、8年前、生後2か月の娘さんを預けてアタッチメント・ベビーマッサージの講座を受講しました。この経験が、現在の活動につながる大きな転機となりました。

一方で、専門知識を持ち、アタッチメントを学んでいた原井さん自身も、育児に深く悩んだ時期がありました。ベビーマッサージの時間だけは穏やかに過ごせても、日々の子育てでは思うようにいかず、自分を責めることもあったといいます。その後、カウンセリングを通じて、自分自身の気持ちや心地よさを大切にする「セルフ・アタッチメント(自分自身との絆)」の重要性に気づきました。

こうした経験から、アタッチメントは子どもとの関わり方を学ぶだけでなく、親自身が安心を取り戻すためにも大切な土台であると実感しました。地元に戻って教室を立ち上げる際には、「看護師の専門性×アタッチメント×包括的性教育」を組み合わせ、親子のふれあいから子どもの権利や発達までを学べる場づくりを始めました。

年間50件以上の講演活動と、親子のふれあいを大切にした実践

現在は、滋賀県内外で年間50件以上の講演活動を行っています。保育園、幼稚園、小学校、PTA、自治体、放課後等デイサービスなど、さまざまな場所で保護者や教職員、子どもたちを対象に、アタッチメントと包括的性教育を組み合わせた講座や研修を実施しています。

特に保育士を対象とした研修の機会が多く、滋賀県私立保育園連盟主催の「保育現場における乳幼児期からの包括的性教育」や、山口県社会福祉協議会主催の主任保育士研修、東近江市保育協議会主催の人権保育研修などに登壇しています。また、女性のための防災講座や、子どもたちに心と体の大切さを伝える講座など、活動の場を広げています。

大勢の参加者を前に講演する原井有加さん

地域の子育て支援センターや親子ひろば、子育てフェスタなどでは、「性教育×ベビーマッサージ」をテーマに、アタッチメント・ベビーマッサージ教室も開催しています。親子が肌と肌でふれあう時間を大切にしながら、安心できる関係づくりについて伝えています。

親子が集まるベビーマッサージの活動風景

原井さんが講座を通じて大切にしているのは、自分の体を知り、大切にすること、自分や相手の「嫌」という気持ちを尊重すること、そして困ったときに安心して相談できる大人との信頼関係を築くことです。性教育を入り口としながら、その根底にはアタッチメントに基づいた安心・安全な関係性を育むという思いがあります。

保育現場で実感した「安心できる関係」の力と、これからの活動

今年度からは保育園看護師として現場にも復帰し、日々の保育を通じてアタッチメントの大切さを改めて実感しています。子どもの後追いや噛み付き、大人の反応を確かめる行動なども、単に「困った行動」として捉えるのではなく、発達段階や安心を求める気持ちに目を向けながら関わっています。

特に印象に残っているのは、言葉の通じない海外出身の子どもが、一人の保育士との継続的な関わりを通じて、少しずつ周囲に関心を向け、園生活に慣れていった姿です。この経験から、安心できる大人との関係が、子どもが新しい世界へ踏み出すための支えになることを実感したといいます。

また、これまでの活動の中では、学童期の子どもたちが「親には言えないからAIや動物に話している」と話す場面にも出会いました。この経験は、正しい知識を伝えるだけでなく、子どもが安心して気持ちを打ち明けられる関係を乳幼児期から築いていくことの大切さを、改めて考えるきっかけになりました。

アタッチメントを学び始めて8年。原井さんが考える子育てのゴールは、子どもを困らせないことではなく、「何かあったとき、助けてもらえると信じて心を開けること」、そして「自分は大切な存在だと感じ、自分の人生を自らの手で選んでいけること」です。

今後も、アタッチメントという安心の土台と、包括的性教育という生きるための知識やスキルの両方を大切にしながら、子どもたちにとっての「一生のお守り」となる学びを届けていきたいと考えています。


原井 有加さん(滋賀県)/ 看護師・「生」教育アドバイザー

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