助産師が挑む、切れ目ない支援のかたち
助産師であり、3児の母でもある兵頭莉世さんは、訪問看護ステーション「Honu」にて、ベビーマッサージや離乳食、食育相談を通じた子育て支援活動を展開しています。活動名は「子育て応援隊」。産前・産後の不安に寄り添い、親子のふれあいや家族、地域のつながりを深める時間を提供したいという思いで活動をスタートされました。
走り出した「子育て応援隊」
「子育て応援隊」の活動は、産前産後の相談会、ベビーマッサージ、離乳食・食育相談の3本柱です。活動開始は今年の春、育休が明けてお子さんが保育園に入園したタイミングでスタートしました。開催は月に1回です。

● 産前産後の個別相談
妊娠中の過ごし方や出産準備、育児用品の選び方などを、家庭環境に合わせて個別にアドバイス。産後は、赤ちゃんとの生活に必要な物や家の環境づくりなど、ライフスタイルの変化に応じた実践的な相談を受け付けています。訪問看護の業務と連携し、実際の生活の場面に即した支援が行われています。
● ベビーマッサージ教室
活動当初、週1回の開催でしたが、現在は月1〜2回のペースで実施中。プレ教室を含め、これまでに複数回開催されており、ママたちが安心して赤ちゃんと向き合える場として好評を得ています。赤ちゃんとのふれあいに加え、参加者同士の交流や情報共有の場にもなっています。
● 離乳食・食育相談
最近スタートした取り組みで、月齢に合わせた離乳食の進め方や楽しく食卓を囲むことの大切さを伝えています。まずは月1回から始め、利用者の声をもとに今後の形を整えていく予定とのことです。
活動は始まったばかりで、現在は主に友人やSNSを通じて参加者が集まっています。「まだまだこれから」という段階ながらも、親子が安心して集える場所として、少しずつ地域に根づき始めています。
「自分の子のために」から始まった学び
兵頭さんが日本アタッチメント育児協会の講座を受講したのは、第一子をご妊娠中のとき。「赤ちゃんとの関わり方や、どんなふうに日々を過ごしたらいいのかを学びたい」との思いから、育休中に「アタッチメント・ベビーマッサージ」「ベビーキッズ・あそび発達」「プレスクール・あそび発達」の3講座を続けて受講されました。 それは、自身の育児のためであると同時に、助産師としての問題意識から生まれた選択でもありました。
現場で感じた「支援の切れ目」

助産師として産院に勤務してたころ、妊娠中や出産直後は支援の手が差し伸べられる一方で、退院後の家庭では孤立しがちである現実に違和感を覚えていたといいます。
「特に保育園や幼稚園に通っていない家庭ほど、子どもと家にこもりがちになり、支援の目が届かなくなってしまうんです」
地域の検診や保健指導も飛び飛びで、家庭ごとの背景に丁寧に関わる時間が限られているのが現状。そんな支援の空白を埋めるために、「退院後も、親子に継続して関われる仕組みが必要」と感じていました。その思いをかたちにしたのが、「子育て応援隊」です。
“つながる・話せる”場所があるという安心
「子育て応援隊」の活動が何より大切にしているのは、「ここなら話せる」「聞いてくれる人がいる」という空間づくりです。実践的な講座のあとには、自然と雑談が生まれ、ママたちの「聞いてほしかった気持ち」がぽろっとこぼれることもあるといいます。
「ちょっとした会話や、誰かに気持ちを聞いてもらえる時間があるだけで、ママたちはふっと表情が和らぐんです。マッサージや離乳食のことより、何気ない話が一番必要だったりもします」
食育が教えてくれた、“食べる”を楽しむ視点
今年の4月に受講した「アタッチメント食育」講座は、特に自身の意識を変える大きなきっかけになったといいます。
それまで、栄養面や食事の内容ばかりに目を向けがちで、「このご飯を食べないと元気になれないよ」「座って食べなさい」といった声かけをしていたと振り返ります。

しかし、講座で学んだのは、「食事の場づくり」そのものの大切さでした。「食事の時間を楽しく過ごすことや、コミュニケーションを取る場といった、場のセッティングを大事にする視点。それはこれまで自分にはなかった視点であり、反省するとともに大きな発見だったと話します。
受講後は、家庭の食卓も大きく変化し、栄養や食材だけでなく「一緒に食べる」「楽しく食べる」ことを重視するようになったといいます。現在はその学びを活かし、離乳食・食育相談の活動を通じて、地域のママたちにも“食べる楽しさ”を伝えています。
“孤立させない子育て”を目指して
活動開始から4か月。まだ参加者は多くありませんが、その分、一人ひとりの声に丁寧に向き合うスタイルを大切にしています。
「子育ての不安をゼロにすることはできないけれど、話すことで軽くなる気持ちはあると思うんです」そして、「いずれは、同じ月齢のお子さんを持つ親同士がつながれるような、小さなコミュニティができたら嬉しいです」と語ってくれました。
これから兵頭さんは、“支援の切れ目”を埋め、“つながり続ける支援”をかたちにしていかれることでしょう。
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