Column

助産師さんがベビーマッサージ資格を取得して活動する実例をご紹介

  1. ホーム
  2. コラム
  3. 助産師さんがベビーマッサージ資格を取得して活動する実例をご紹介

2020年厚生労働省は「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援」のなかで、“誰ひとり取り残すことなく妊産婦に対し、安心・安全で健やかな妊娠・出産、産後をサポートする”方針を打ち出しました。

これを託されたのが、全国の助産師です。保育士さんが0歳児親子の地域子育て支援を託されたのと、よく似ています。「『切れ目のない支援』のために、何をしたら良いのか?」その答えとして、助産師さんたちが辿りついたのがベビーマッサージです。

助産師さんは、なぜベビーマッサージを選んだのか?

理由を挙げたら、キリがないほどたくさんあります。

ベビーマッサージは、お母さんたちへの認知度も高く、これから出産をひかえたお母さんたちにとって、「赤ちゃんが産まれたら最初にやってみたいことNo.1」にあがる人気があります。つまり、ベビーマッサージ教室に通うことに関するお母さんたちのモチベーションが、出産直後からすでに高いのです。さらにベビーマッサージは、新生児期の赤ちゃんから取り組める「親子の営み」です。これは、「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援」を標榜する政府の意向にもぴったり合います。

ベビーマッサージ教室は、産褥期のお母さんにとって、非常に有益であることも大きな理由です。赤ちゃんとベビーマッサージに取り組むことで、お母さんの体でオキシトシンというホルモンが分泌されて、精神面が安定することがわかっています。これは、産後うつの軽減にもつながります。

“助産師によるベビーマッサージ”だからこその強みがある

「助産師がおこなうベビーマッサージ教室」だからこその強みもあります。助産師がベビーマッサージ資格を取得して、ベビーマッサージ教室を開くことで、授乳指導や産後ケアといっしょに、お母さんたちに発達や子育ての知識を伝えることができます。

それだけでなく、助産師でもあるベビーマッサージ・インストラクターは、お母さんたちからの子育てのお悩み相談にこたえることができます。実際に、当協会のベビーマッサージ・インストラクターの多くは、ベビーマッサージ教室のあとに、お悩み相談の時間を設けており、それが教室の満足度を上げています。長く通っているお母さんほど、このお悩み相談の時間が目的で通ってくる傾向があります。

ちなみに、当協会の「アタッチメント・ベビーマッサージ資格」には、「育児セラピスト2級」のカリキュラムが必須科目として入っています。それは、お母さんたちに発達と育児の知識を伝え、悩み相談に答えるだけの“知識の裏付け”を身につけてもらうことが目的です。

このように「ベビーマッサージ教室+お悩み相談」という形でベビーマッサージ教室をやっていると、参加者同士も一体感が強まり、インストラクターを中心としたコミュニティができてゆきます。

助産師さんがベビーマッサージ資格を取る理由とは?

日本アタッチメント育児協会でベビーマッサージ資格を取得する助産師さんは、大きく2つのケースがあります。ひとつは、産院や病院の産科で、産科医とともに出産をとりあつかう助産師さん。もうひとつは、産前・産後のケアを受けもつ開業助産師さんです。割合で言うと、おおよそ半々くらいだと思います。

前者のケースでは、クリニックや病院が主導して、勤務する助産師さんが運営して、院内でベビーマッサージ教室を開くというスタイルが多いようです。この場合、ベビーマッサージ教室が、クリニックにとって、患者さんへの手厚いケアとなり、他の院にはない特色となります。また、検診や診察以外の目的で、来院してもらう機会にもなります。さらに、インストラクターとしてベビーマッサージを教えた助産師さんとお母さんの間に深い人間関係を築くことができます。それによってクチコミが生まれ、クリニックの評判が上がります。

後者の開業助産師のケースでは、助産師さん自らが主導・運営して、会場も助産院だけでなく、子育て支援センター、児童館、文化センター、あるいは出張訪問などさまざまで、複数の会場で行うスタイルが多いようです。開業助産師さんにとって、ベビーマッサージ教室は、安定した集客につながります。お母さんが集まる様々な場所で接点が出来て、インストラクターとしてベビーマッサージを教えることで、お母さんとの間に信頼関係ができて、授乳指導をはじめ助産院の利用につながれば新規集客になります。また、助産院にすでに来てくれている既存客のお母さんに対してベビーマッサージ教室を行えば、さらなるフォローにつながり、満足度があがり、より安定した関係性を構築することができます。こうした高い満足度は、クチコミを生み、さらに安定した集客につながり、助産院の経営の安定につながります。当協会でベビーマッサージ資格を取得した開業助産師で、このような流れを構築することに成功している方が多数います。

助産師によるベビーマッサージ教室の実例

ここで実際に、開業助産師として、アタッチメント・ベビーマッサージを導入した方の事例をご紹介します。

群馬県で、「すこやか助産院」を営む助産師の佐藤裕子さん。ご自身が営む助産院で、「ベビーマッサージ教室」と産前・産後に対応した「アタッチメントヨガ教室」を展開しています。さらに、ママたちの子育ての不安に寄り添いたいと子育て支援センターをはじめ、ハンドメイドカフェやレンタルルームでも教室を開いていらっしゃいます。そんな佐藤さんの事例をご紹介します。

開業助産院から広がるママたちの交流の場づくり

助産院の開業に合わせて資格を取得

佐藤さんは、助産院を開業された2016年に「ベビーマッサージ教室で、ママたちと交流の場をつくりたい」と、「アタッチメント・ベビーマッサージインストラクター」の資格を取得されました。

受講後は、アタッチメントやスキンシップの重要性をこれまで以上に痛感したといい、教室にくるママたちには毎回必ず、伝えているといいます。

産前・産後をサポートしたいとアタッチメントヨガを受講

さらに、2019年に「アタッチメント・ヨガインストラクター」を取得。ママたちの産前・産後のサポートに「少しでもお産がスムーズに進み、産後も体が軽くなればいいなと、それによりママたちの気持ちも明るくなれば」との思いで、取得されました。

また、2018年には、教室に一緒にくる赤ちゃんのご兄弟にも対応したいと「アタッチメント・キッズマッサージ」を受講されています。

4つの活動場所で教室を開催

現在、佐藤さんは4つの場所(助産院、子育て支援センター、ハンドメイドカフェ、無料のレンタルスペース)で、それぞれ「ベビーマッサージ教室」や「アタッチメントヨガ教室」を開いています。

子育て支援センターは、毎月、定期的に開催しており、そのほかは、お申込みに合わせて開催しているそうです。

「私は、助産師会の母子訪問もしていますが、ここ数年コロナ禍の影響で『訪問は絶対に受けないといけないのか?』とおっしゃるママもいます。まだまだ人の多い場所に行くのは、抵抗のあるママたちが多いのかなと思います。」

そのため、佐藤さんの教室では、感染予防をしっかりとしたうえで、3組を上限としています。また、助産院ではマンツーマンで受けられるように時間調整をしています。

助産院のベビマ教室は、マンツーマンで開催

助産院でのベビーマッサージ教室は、来院された方や、HPでの案内を見られた方が、メールやお電話で予約されるといいます。先日も、授乳トラブルで来院された方が、ベビーマッサージ教室のことを知ると早速、HPから予約されたそうです。

「ママと赤ちゃんのお出かけとして、マンツーマンのベビマ教室は安心して来てもらえていると感じます。子どもの体重も計ってもらえ、ベビーマッサージもできるので、ママたちからはリフレッシュになると好評をいただいています。」

「途中で授乳したり、赤ちゃんがうんちしてしまったり、寝てしまったりもするので、状況に合わせて何回かに分けてすすめています。なので、1回だけということでなく、通ってくださる方が多いです。」

ベビマ教室で、佐藤さんが必ず伝えていることがあります。

「しっかりとスキンシップをすることの大切さ、アタッチメンを形成する大切さを毎回お伝えしています。ママたちも真剣に耳を傾けて聞いてくれています。」

子育て支援センターで教室を始めたきっかけ

子育て支援センターでは、毎月、3組に限定して「ベビーマッサージ教室」と「アタッチメントヨガ教室」を開催しています。

「自分の子どもが3人とも通っていた保育園の子育て支援センターというご縁で始めました。それまでも、地域のママたちから病院にいく程ではないけれど、子育てのちょっとした心配ごとをメールで相談されることが多くありました。」

そうしたやりとりのなかで、佐藤さんは、「ママにとっては、二人目の子でも三人目の子でも、その子にとっての子育ては初めてなので心配なことがたくさんある」ことを痛感しているといいます。

ネットで調べたら余計心配になる、これでいいのかなと思ったことに専門家からひと言「それで大丈夫だよ」と言ってもらいたい、そんなママたちの本音に触れてきました。

「子育て支援センターの教室は、ママたちの不安や心配に寄り添いたいとの思いで、地域のボランティア活動として行っています。ママたちとの交流の場をつくることで、ネットワークが広がることを期待しており、今後も続けていきたいと思っています。」

人気のアタッチメントヨガ教室

「アタッチメントヨガ教室」が、子育て支援センターでは人気だといいます。

「お子さまと一緒にできるヨガをしています。生後6カ月を過ぎるとハイハイでおもちゃの方へ行ってしまったりするのですが、そんなときも、保育士さんが常時二人いらっしゃるので、お子さまをお任せできるのがママたちにとっても安心なようです。自分の時間が持てたとおっしゃって、リピートしてくださる方が多いです。」

いま、助産師として感じること

佐藤さんは、ママたちと接するなかで、「いまのママたちは、子育てに不安をより抱きやすくなっている」といいます。そのため、その不安にどう寄り添うのか、十分な配慮が必要であると感じています。

「例えば、病院で授乳方法を教わっていても上手くできないと来院される方がいます。昔の指導のような、スパルタでは上手くいきません。授乳回数10回/日は普通のことですが、その方にとっては、1日6回の授乳でも頑張っているのです。そこを、どうベースアップさせていくのか、指導的に言うのでは上手くいきません。ママの気持ちに寄り添いながら『一緒に歩んでいきましょう』と言う、すべてにおいて、そういう姿勢で接するように心がけています。」

ママを孤立させないための子育て支援をしたい

佐藤さんは、孤独に子育てをせざるを得ないママが多くなっているといいます。

「ベビマ教室でも授乳相談でも、いろいろと質問がでてきて、2時間以上になることもあります。お話を聞くと、ご主人が帰って来るまではお家で一人、実家にも頼れない、そういう方が多くいらっしゃいます。」

また、「ママたちは、お子様が笑った、声を出している等そういう瞬間を一緒に共感してもらいたい、そして、子育てを頑張っていることをわかってもらいたいと思っています」と代弁します。

交流できる場を作ることで、ママを孤立させないようにしていく必要があるとお話されています。

今後の展望

佐藤さんは、今後も、4つの場所で現在行っている活動を継続していきたいとおっしゃっています。

「ベビマ教室やアタッチメントヨガ教室を通じて、スキンシップ及びアタッチメント形成の重要性を理解してもらい、かつママ同士の交流やネットワークが広がればと思っています。」

また、「ママ、パパが孤立した子育てにならないよう、かつ、安心して子育てができるようにママパパの気持ちにいつも寄り添っていける支援者でありたいと思っています。」

     

Index

目次