ベビーマッサージ教室から地域へ広がる コミュニティと子育て支援活動
山口直美さんは、2011年にアタッチメント・ベビーマッサージの資格を取得してから、現在まで「スマイルママ ベビーマッサージ教室」を運営しています。山口さんの教室は、ベビーマッサージを通じて親子のアタッチメントを深めることを目的としています。インタビューでは、これまでの活動や教室運営の背景について語っていただきました。
ベビーマッサージ資格を取得しようと思ったきっかけ
山口直美さんは2011年11月に大阪会場でアタッチメント・ベビーマッサージ(ABM)の資格を取得しました。当時は保育士として保育園に勤務しており、赤ちゃんとの触れ合いに興味を持つ中で「ベビーマッサージ」という言葉を耳にしました。ベビーマッサージについて調べてみると、たくさんの団体があることがわかりました。
そのなかで、日本アタッチメント育児協会のベビーマッサージは、脳と精神医学の観点から心療内科医師の寺下謙三先生が監修していたことは、大きかったそうです。さらに、協会が提唱する「心の安定がないと脳も育たない、だから脳と心の両方が大切である」という主張には感銘と共感を受けたそうです。
「いろんな団体があったが、日本アタッチメント育児協会は、自分の想いと一致し共感できたことが決め手になった」と言います。そして、山口さんが住む福井県から最も近かった大阪会場で受講しました。
山口さんは「アタッチメント育児」の理念に共感し、その考え方を実践するために資格を取得し、その後も積極的に活動を続けてきたと振り返ります。
講座を受講して、10年以上活動を続けて思うこと
講座では、ベビーマッサージを学んだだけではなく、いろんな人との出会いがありました。愛媛県の助産師さん、若手の保育士、グループワークで一緒になった大阪の方な ど・・・。この人たちとは、名刺をいただいたり、LINEを交換したりしまして、しばらくは連絡しあっていました。
ところが、それぞれに忙しく、次第にお付き合いが疎遠になってしまいました。いまから連絡取ろうと思っても、なかなか叶いません。継続して連絡を取り合う仲だったなら、「最近ベビマどう?」といった話をして、お互いが勉強し、刺激し合うことができたのかな?つながっていれば、色々聞いて、自分も真似してやってみようとか、考えが広がったんじゃないかな?と残念に思うことがあるそうです。
キッズマッサージの受講と独立への道
山口さんは、子育てや夫の単身赴任などがあったため、公立保育園の臨時保育士として働いていましたが、ベビーマッサージ資格取得を機に「私はベビーマッサージをやっていきたい、教室を開いてやっていきたい」と思うようになりました。そして、52歳のときに保育園を退職しました。
ベビーマッサージ教室をメインでやっていくなら、0歳児だけでなく、そのあとも通ってもらえる教室にしたいと考え、ベビーマッサージに続いて、スキルアップのキッズマッサージを受講しました。そして、「スマイルママ ベビーマッサージ教室」を立ち上げ、現在に至ります。
教室運営の工夫と告知方法
教室の運営初期には、市の広報誌に教室の案内を掲載し、地域の子育て支援センターにチラシを置かせてもらう、などの方法で告知を行いました。
山口さんの教室は、予約制ではなく、自由に参加できる形式を採用しています。これは、参加者が気軽に教室に参加できるようにするための工夫です。予約制にすると、参加できない場合にストレスを感じることがあるため、お母さんたちがリラックスして参加できる環境を作ることを重視しています。また、教室では写真を撮影し、参加者に送ることで、思い出を共有し、教室への愛着を深める工夫もしています。
活動の広がりとコミュニティセンターでの教室
山口さんの教室は、自宅近くの大石コミュニティセンターから始まりました。そこから次第に地域内の他のコミュニティセンターや公民館にも広がっていきました。さらに、春江町内の春江東コミュニティセンターや隣町の丸岡町公民館でも教室を開催するようになりました。2014年からは、福井県子育てマイスターとして、子育て支援センター3か所でも、年に1回ベビーマッサージ教室を担当するようになりました。山口さんは、その後10年間にわたって定期的に活動を続けてきました。
山口さんのこの活動は、地域社会でも評価され、さまざまなイベントや子育て支援センターでの講座にも招かれるようになりました。保育園や市役所の広報誌に活動内容を掲載してもらうなど、広報活動にも力を入れています。
コミュニティ形成と年間行事
山口さんは、ベビーマッサージだけでなく、絵本の読み聞かせや手遊び、親同士の情報交換も行っています。親子がリラックスして楽しめる場を提供し、育児の不安を軽減するためのサポートを行っています。
教室参加者と長くつながりを持てるようにするために、グループLINEを活用しています。このグループには現在176名が登録され、年間行事や子育てに関する情報交換の場として活用されています。サツマイモの芋堀りなどのイベントも開催し、卒業後もつながりを維持するための工夫をしています。
コロナ禍での活動
コロナ禍では、小学校の児童クラブの情報をもとに活動を調整し、流行状況に応じて休止や再開を行いました。参加者の信頼関係を大切にし、消毒やマスクの着用などの対策を徹底して活動を続けました。
手形絵画遊びと母子の成長記録
2024年4月からは、年齢を重ねたこともあり、活動の場を自宅近くの「ゆりの里公園」に集中させることを決めました。これまでの遠い場所での教室はやめ、大石コミュニティセンターでは手形絵画遊びとして活動を続けています。
この手形絵画遊びでは、子どもの成長を手形で記録し、その時の母親の気持ちや子どもの成長の様子を一緒に書き込みます。これにより、母子手帳に記録を残さなくても、成長の様子を一目で分かるようにしています。この活動は、多くのお母さんに喜ばれ、楽しみにされているイベントの一つです。
今後の展望
「これからも地域のお母さんたちを支援し続けたいと考えています。それと同時に、特定の目標を持たず、毎回の活動を楽しむことを大切にしていきます。お母さんたちとのつながりを大事にし、「感謝の気持ちを忘れず、続けていく事」が今後の目標です。
ゆりの里公園での教室は、今後も続けていく予定ですが、それ以外にも、依頼が来たときには、出来る範囲で教室を開いていこうと思っています。」と今後の展望を聞かせてくれました。
最後に
山口さんの取り組みは、地域社会における子育て支援の模範となるものだと思います。人生ステージに合わせて、精力的に活動する時期もあり、現在は、無理のない形で、「続ける」ことを第一に考えて継続されている山口さんの活動は、多くのお母さんたちにとって大きな支えとなっており、親子のアタッチメントを深める貴重な場を提供しています。
最近のコメント