北欧 フィンランド、スウェーデン 最新「幼児教育・子育て支援」事情

スウェーデン・リデンギョ市 ムッレ保育園

(注:スウェーデンの制度では、厳密にはプレスクールと呼ぶのが正しいが、本稿では、あえて一貫して保育園と呼んでいる)

フィンランドの視察を終えて、われわれ一行は、スウェーデンへと向かった。最初に訪れたのは、ストックホルム郊外のリデンギョ市のある特徴的な教育を提供する私立保育園だ。「ムッレ教育」と呼ばれるその教育法は、自然の中での体験を中心に据え、子どもたちが、自然にふれあい、体で自然を理解し、自然が好きになり、自然を大切にする優しい心を育てるというもの。

ストックホルム郊外の閑静な住宅街の中に、森のムッレ保育園はあった。もともとは戸建ての二階建住宅だった建物が園舎となっている。決して広くはないが、必要にして十分な大きさだ。基本的な活動場所を、園庭や森の中、スキー場や湖としているムッレの子どもたちにとっては、あまり関係ないようだ。

園庭見学の後、園舎の中を見学した。キッチンは、一般住宅のフルキッチンだが、園児数25名のこのムッレ保育園では、必要にして十分な様子だ。それよりも驚いたのは、なんと専属のコックさんがいること。スウェーデンでは、自園調理は義務付けられていないので、これは、この園のこだわりなのだ。ダイニングの壁には、森のムッレを象徴する絵が壁一面に描かれている。 このダイニングとリビング部分は、食堂と子どもたちの共有のあそび場とミーティングルームを兼ねた多目的スペースで、2階には子どもたちのプレイルームがある。広くはないが、とても心地の良い空間になっている。しかし実際のところ、ほとんどの活動を外で行い、お昼寝でさえ外で寝袋を敷いて寝るムッレの子どもたちは、それほど長い時間園舎では過ごさない。

今回は、時間の都合で、森のムッレ保育園名物の森あそびを見学することが出来なかったのが心残りだったが、このあと園長先生がスライドの写真を交えて、普段の活動を説明してくれた。

この森のムッレ保育園は、一日のほとんどを外で過ごす。つまり、自然の中の体験から学ぶ方針なのだ。晴れた日だけでなく、雨の日も、雪の日も、寒い日も、暑い日も。スウェーデンの冬は、マイナス20℃まで下がる日もある。そんな日でも、活動場所は外なのである。そのため、園児たちは、かなり本格的な防寒具や防水の洋服を、それぞれ園舎に準備している。

こうして外で過ごすことの狙いは、丈夫な体をつくること。そして、自然に親しむことで、自然を大切にする心を育むこと。同時に、自然から様々なことを学ぶ。それは、机上では得られない学びであり、幼児期には、かけがえのない体験なのである。季節に応じて自然は変化し、遊びも変化する。ムッレでは、自然の中の活動の種類に応じて、ワッペンを用意しており、子どもたちは修了証のような意味合いで、それぞれの活動を修めるとワッペンをもらえる。より多くのワッペンを付けた子は、それだけ多くの経験をしているということで、親から、あるいは先生から褒めてもらえる。また、本人のモチベーションにもなり、他の園児から一目置かれることにもつながる。

この森のムッレ保育園は、広い園舎も、広い園庭もなくても、自然を活動場所に選べば、こんなに理想的な保育が可能なのだと、教えてくれた。実際、この園の評判は上々で、常に待ちが出ているそうだ。

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