北欧 フィンランド、スウェーデン 最新「幼児教育・子育て支援」事情

フィンランド・ロホヤ市
ネウボラとファミリーセンター

フィンランドには、「ネウボラ」と呼ばれる子育て支援サービスがある。フィンランド語で“ネウボ(neuvo)=アドバイス”“ラ(la)=場所”という意味だそうだ。ネウボラは、妊娠期から子どもが6歳になるまで、切れ目なく家族を支援してくれる。これを国が主導して、市などの自治体が運営している。これだけ聞くと、日本の子育て支援センターや子育て広場と同じではないかと思われるかもしれない。しかし、ネウボラは、よりシステマティックであり、より手厚く、より身近で、利用しやすい。

実際、ネウボラが提供する総合的な子育て支援によって、フィンランドの親は、生まれてくる赤ちゃんが「国から歓迎されている気がする」と言うのである。フィンランドでは、赤ちゃんが生まれた親に、政府から出産祝いとして育児パッケージがプレゼントされる。そこには、衣類からオムツ、そして避妊具まで、約50点が入っている。この育児パッケージが、ネウボラを利用する動機づけであり、最初の接点となっているのだ。まさに、赤ちゃんの誕生を国ぐるみで歓迎し、サポートしていくということを、親は実感するのであろう。

日本の子育て支援においても、支援の必要なお母さんほど、内にこもってしまい、利用してもらえないのが問題となっている。このフィンランドの出産祝いは、その解決策の一つかもしれない。

前置きはこれくらいにして、われわれが訪れたロホヤ市の話をしよう。ネウボラの運営は、各自治体に任されているので、運営形態はそれぞれだ。保育園の中にネウボラだけを設置しているケースもあれば、ロホヤ市のように、ファミリーセンターを設置して、その中にネウボラをはじめ、様々なサービスを総合的に設置するケースもある。

ロホヤ市では、福祉を意味する「welfare(よく暮らす)」を発展させて「well-be(よく存在する)」ということで「welfare から well-be へ」というスローガンを掲げ、より総合的に家族をサポートする体制づくりを進めているそうだ。

このファミリーセンターは、その一環として、ネウボラの他にも、精神科医や各種セラピー(言語、神経、運動)、ソーシャルワーカーなどが、それぞれ独立ブースで待機しており、基本的に無料でサービスが受けられる。そう話してくれたのは、このファミリーセンターのセンター長さんだ。

つまり、お母さんは、子育てのことで何か悩みや問題があったら、まずファミリーセンターへ足を運べば、解決の第一歩を踏み出すことが出来るようになっている。例えば、子どもの言語発達に心配のあるお母さんは、授乳のついでに言語セラピストに相談できる。あるいは、運動発達に心配があれば、運動セラピストに相談し、その場でプロによる運動観察が受けられる。 必要に応じて、お母さんの子どもへの接し方を、別室から観察するための部屋も用意されている。うつ傾向のお母さんが、精神科医の診断を受けることも出来る。どれも、普通なら訪れるには敷居が高いし、まずどこにその専門科がいるのかを探すことから始めなければならない。それが、普段から気軽に訪れているファミリーセンターで、事が済んでしまうのだ。

また、より身近に、より気楽に来てもらえるように、以前は市庁舎の中に合ったこのセンターを、ショッピングモールに移設したという。これは、なかなか良いアイデアだ。実際この町で一番にぎわっているショッピングモールの中に、お店に並んでファミリーセンターがある。これは、身近に感じられる。

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