Touch Research Institute 訪問記

マイアミ大学外観 マイアミ大学外観

米国でマッサージの効果における様々な調査検証を行う団体Touch Research Institute (タッチ・リサーチ・インスティチュート)を訪問しました。ここは、マイアミ大学と連携した団体で、マイアミ大学附属病院内にあります。代表は、当協会のアタッチメントベビーマッサージのメソッドにおいても、様々な知見を使わせていただいている「Touch」の著者であるTiffany Field (ティファニー・フィールド)博士です。

ティファニー博士 マイアミ大学外観

今回は、当協会のマスタートレーナーであり、アタッチメントベビーマッサージのシニアインストラクターでもある桑山講師と共に、低出生体重児へのマッサージ(Premature Baby Massage)と、妊婦のためのマッサージ(Pregnancy Massage)の技術研修と認定を受け、赤ちゃんから妊婦、シニアにおけるマッサージの様々なリサーチデータを学ぶのが主な目的です。それだけではなく、今回の訪問では、Field 博士にも直接会って話をする機会もあり、大変有意義なものとなりました。

Field 博士

左から、私(廣島)、ティファニー・フィールド(TiffanyField)博士、桑山、今回の研修講師アラーナ・パグリース(Alanna Pugliese)先生
今回の研修で得たものは、アタッチメント・ベビーマッサージインストラクター向けコンテンツとして、会員サイト「アタッチメントライフ」で、フィードバックさせていただきますので、ベビマインストラクターの方は、お楽しみに!

アメリカのマッサージ業界事情

アメリカのマッサージ

まずは、研修の詳しい内容ではなく、アメリカにおける「マッサージ」の位置づけとその可能性について、私が感じたことをお伝えしたいと思います。アメリカでは、マッサージ師(Massage Therapist)という仕事が、日本よりも仕事として確立している印象を受けました。
アメリカでは、「マッサージ」に対する基本的な資格LMT(Licenced MassageTherapist)があります。その資格は州ごとに管理、運営されているそうです。そして、どこかの州で資格を取れば、州を移った場合や州をまたぐ場合に、新しい州において簡単な研修と届け出をすれば、その州の資格が得られます。この基本的なマッサージ資格に付随して、針の研修、灸の研修、カイロプラティックの研修、タイ古式の研修・・・というように、個々の手技を学ぶ仕組みになっています。今回私が認定を受けた「低出生体重児へのベビーマッサージ(Premature Baby Massage)」と、「妊婦のためのマッサージ(Pregnancy Massage)」も、その中の一つです。

health ベビマ

これらの資格をもって、Massage Therapist(マッサージセラピスト)として、それを仕事にします。アメリカでは、この仕事が社会的に認知されており、各地域にこうしたマッサージ師の施術院が、様々な種類のマッサージを提供しています。そのため、マッサージは、アメリカ人の生活の中で比較的身近なものであるという印象を受けました。そして多様にマッサージが扱われ、そして有効利用されている印象を強く受けました。

一方、日本の方が進んでいる点も見つけることが出来ました。例えば、今回修めてきた「低出生体重児へのベビーマッサージ(Premature Baby Massage)」ですが、アメリカでは、赤ちゃんへの施術はTouch Research Institute (タッチ・リサーチ・インスティチュート)の認定インストラクターが、NICU(新生児集中治療室)に出向いて行います。NICUの看護師は、自身の担当する患者に対して責任があるので、余計なリスク(実際はリスクではないのですが)をおかしたくないのです。そのためマッサージの施術に対して、あまり好意的ではないため、インストラクターも気を使う必要があるようです。また、母親もベビーマッサージの施術に協力はしているものの、それほどの重要性を感じていないようでした。

本当は、保育器に入った低出生体重児にとって、ベビーマッサージを受けることは、脳神経系の発達を促すだけでなく、情緒系の発達にも貢献しており、とても良いことなのです。もし、こうした「つながり」がなければ、NICUの赤ちゃんにとって、人との接触は、注射をするとか、機械をつけるとかといった痛くて怖い経験でしかなくなってしまいます。人と触れ合うことは、気持ち良いこと、Happy なことと思える体験をさせてあげるために、ベビーマッサージはとても重要な体験なのです。しかし、現場の看護師もお母さんも、そうした大切さを知る機会がないため、その重要性に気付くことなく、世話をしています。すごく良いことをしているのに、噛み合っていない感じが否めませんでした。

ティファニー博士らは、退院時にお母さんへDVDを渡し、マッサージの方法と重要性を伝える場を持つのですが、お母さんへの教育がもっとも難しいとのことでした。

保育園などでも、状況は同じだそうです。保育士が園児にマッサージすることはなく、また、お母さんに指導することもないそうです。病院と同様に、基本的にマッサージセラピストが出向いて行うそうです。仕事として確立している分、お互いの領分を荒らさないのがアメリカ式なのでしょう。

一方、日本ではどうでしょう。私どもの協会のインストラクターの多くは、保育士や看護師、助産師です。NICUでは、看護師自らがベビーマッサージの理論と学術背景、手技を学び、新生児にマッサージを施し、また親への指導も、直接行っています。この方が、マッサージの施術もスムーズな上、親との関係性が構築されやすいので、親への指導もより浸透します。さらに、退院後には地域のベビーマッサージ教室に通うこともできます。保育園でも同様に、保育士自らが園児にマッサージをしたり、親への指導をしたりしています。そして、興味を持った親が、教室へ通う流れも出来ています。

このように、保育士や看護師、助産師が自らベビーマッサージを学び、親に指導し、必要があれば施術もするという日本の状況は、アメリカよりもむしろ進んでいると感じました。

 

※ 保育士による園児への施術や看護師による患者(新生児含む)へのマッサージ施術は、マッサージを業として行うことにはならないため、全く合法です。詳しくは、次の、「資格についてのコラム」を参照ください。

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