北欧 フィンランド、スウェーデン 最新「幼児教育・子育て支援」事情

フィンランド・ロホヤ市 私立保育園

次に訪れたのは、私立保育園「テナバ・ラークソ(子どもたちの谷)」。フィンランドでは、公立も私立も親が払う保育料は同じ(0~354ユーロ(日本円で0~約4万円)・世帯年収と子どもの数で決まる)で、基本的に保育の質も大差はない。親が保育園を選ぶ基準は、家から近い、会社から近いなどの利便性だという。確かに今回訪れた私立保育園も、敷地はゆったりしていて、施設も新しく、公立と大きな差はない。

この園は、「フィンランド子どもの家」という会社によって運営されている。この会社は、全国で26の園を運営しており、自前で給食センターをもっている。オーナーは、ノルウェーの会社で、北欧やオランダなどで手広く保育園を展開し、園の買収なども積極的に進めているそうだ。

そんなビジネスライクな裏事情とは裏腹に、この園の雰囲気は、のんびりしていて、公立の園と何ら変わらない印象だ。そこには、効率化や利益追求というような一般企業的な要素は見られない。園児数に応じた補助金によって、公立園と同じ運営が出来るだけの運営費がまかなわれる、いわば市の下請けのようなものらしい。

実際話を聞いてみると、先日訪れた公立保育園と、基本的に同じであった。この園でも、外遊びによる体験を重視しており、2週間に1回「森あそびの日」を設けて、一日中森で過ごしている。これは、親から好評を得ているらしい。

また、親との連携も重視しており、入園時(秋学期)のはじめに、両親との1時間の個別面談を持ち、そこで園児一人一人の育成目標を親と共有し、春学期のはじめに、その成果を共有する。また、担当保育士は、毎日の送り迎えの時の親との丁寧なコミュニケーションを行い、毎日メールで写真入りの日誌を送っているそうだ。こうした個々の親に対するコンタクトが徹底しているところも、公立保育園と同じである。

ただし、まったく問題がないわけではないようだ。この園でも保育士の確保が年々難しくなっているらしい。保育士のなり手がいないのだ。その原因の一番は、保育士の給与水準の低さと、社会的ステータスの低さだと言う。一般的な一家の大黒柱の収入は、月3500ユーロ、それに対し保育士(高卒)は2200ユーロ、保育の先生(大卒)は2400ユーロである。つまり、保育士1人では一家を支えていく事は出来ない。この問題は、日本の私立園でも全く同じである。保育・幼児教育では日本より先を歩いているフィンランドでも、保育士の問題は、同じであることがわかった。

最後に、フィンランドの子どもたちと、手遊び歌を一緒にやって交流した。

次のページ
フィンランドの先進的な子育て支援の仕組み

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ