第7回育児セラピスト全国大会2016「あそびをまなぶ」

アタッチメント教室部門:植戸 真紀さん

「8年間のキャリアを通して生まれたリピート率9割の教室運営の秘訣とは?」

植戸さんは、大阪の加古川市で、スポーツセンターを舞台に、ベビーマッサージ教室や体操教室でインストラクターとして活動されています。 植戸さんは、アタッチメント・ベビーマッサージ講座の大阪1期生として、資格を取得してから、これまで8年間(2016年現在)にわたって、ベビーマッサージ教室を続けてこられています。当協会のインストラクターの中でも、もっとも長く続けてこられているおひとりです。もうすぐ10周年を迎えられる植戸さんの発表から、永く活動を続けてこられた秘訣を学ばせていただきたいと思います。

長期にわたる安定運営の秘密は、リピート率にあった

植戸さんが開いている教室は、リピートの生徒さんで7~9割が占められており、残りの1割から3割の枠を新規の生徒さんで埋めるというのが型になっているそうです。これも、理想形の一つと言えます。この型に持っていければ、口コミで枠は埋まってくれますので、ほぼ新規集客のための施策は必要ありません。植戸さんが、8年間も教室を続けてこられている秘訣のひとつは、7割から9割という安定したリピートにあると言ってよいでしょう。ただし、この理想形にたどり着くまでには、相当な努力と工夫があったことと思います。その秘訣を、植戸さんの発表から学ばせていただきたいと思います。

植戸さん1植戸さん5

8年間の経験からわかった「ちょうど良い」人数と値段、時間と回数

まずは、技術的な部分です。これは、植戸さんが8年間教室を続ける中で試行錯誤して得られた「貴重な答え」です。クラスは、「ベビークラス」と「キッズクラス」の二つ、定員はそれぞれ15組。月3回3000円、1回60分というのが、植戸さんが、これまでいろいろやってきた中でたどり着いた答えだそうです。これから教室を始められる方や、ご自身の教室の型が決まっていない方は、まずは、植戸さんの型から始めてみられると運営しやすいと思います。

9割のリピートを生む「生徒募集の仕組み」とは!

もう一つ技術的な面で、注目のポイントがありました。月単位で申込を募るスタイルですが、その際に、継続の生徒さんを優先的に受け付けるというところです。継続で余った枠を新規募集するのです。これは、継続の方にとっては優先権ですので、確実にリピートできる安心感があります。逆に、新規の方は、運が良くないと入れないというプレミアム感が生まれます。最初にプレミアム感を感じて教室に入った人は、継続の際には、優先権を行使することでしょう。この仕組みも、長年やってきた中で最適化されて、今の形になったことと思います。もう一つ、技術面の工夫は、「ネーミング」です。植戸さんの教室では、キッズマッサージのクラスを「乳幼児わくわく体操」とネーミングだけを変えたそうです。これによって、新規の方の注目度が増したそうです。こうした技術面は、すぐに見習えると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

「満足度の高さ」と「関係性の深さ」は、安定の証

次に、リピート率が高い教室作りという観点です。これには、大きく二つの要素が関係しています。一つは、教室の内容や体験、過ごした時間に対する「満足度の高さ」です。もう一つは、先生と生徒あるいは、生徒同士の「関係性の深さ」です。植戸さんの教室は、この二つの要素が、非常に安定して保たれています。

「場づくり」へのこだわりが、安定して高いリピートを生む

まず「満足度の高さ」についてです。私は、植戸さんの「場づくりの上手さ」と「インストラクションの質」そして、「オイルマッサージ」がこれを支えていると感じました。「場づくりの上手さ」に関しては、例えば、赤ちゃんは、いつも静かに寝ていてはくれません。動き回ることもあるし、泣いてしまうこともあります。そうした時に、「動いても大丈夫だよ!」と対応すること、「泣いちゃってもいいんだよ!」「ここで存分に泣いときな」とお母さんと赤ちゃんにOKを出してあげて対応してあげる。それを見ている他のお母さんにとっても、安心感につながるわけです。また、こうしたOK対応を受けると、お母さんもリラックスできるので、赤ちゃんは意外と落ち着くものです。あるいは、赤ちゃんやママに話しかけたり、「上手だねー」と褒めたりということも積極的に行います。

そうして、「安心したよい場」が出来上がっていくのです。さらに、お母さん同士が話をする時間を設けて、おしゃべりタイムを作っています。そうすることで、場の空気は、さらに良いものになります。「インストラクションの質」に関しては、8年のキャリアも大きいですが、植戸さんの場合、教室を始めた時から、これについて意図的であったようです。初めての時から「また来たい!」と思ってもらえるように、しっかり練習し、時間配分や進め方、何を言うかを吟味し、それらを完全に頭に入れて臨んだそうです。さらに、教室が終わったら自己反省会として、自分で自分の振り返りをして、それを書いて残し次に活かしているそうです。「また来たい!」と思ってもらうために、ここまで努力されているのです。インストラクションは、上手い下手ではないことの好例だと思います。上手くなるのは結果であって、「はじめての教室」を上手くやれる人はいません。でも、精一杯準備することは出来るし、考え抜くことも出来ます。そして、それを振り返り、次に活かすことは出来ます。上手いインストラクションでなくとも、そうした思いは、生徒さんに伝わり「この先生の教室に、また来たい」と思わせるのだと思います。そうしているうちに、結果として上手になっているのです。

「オイルを使ったマッサージ」が、より高い満足を生む理由

もう一つ注目したいのは、植戸さんが、オイルを使ってマッサージすることを強調していたことです。オイルを使うのと、使わないのとでは、子どもの気持ちよさが全く違うだけでなく、お母さんの気持ち良さも違う、と言います。そして、その気持ちよさは、やはり「いい場」を作り、「また来たい!」という気持ちを生みます。これをお読みの方の中には、オイルを使わないベビーマッサージやキッズマッサージをされている方もいると思います。それは、それでOKだと思います。オイルを使えない事情がある場合もあるでしょう。しかし、一度は、オイルマッサージを試されて、その反応を体感されると良いと思います。オイルを使う時と、そうでない時を使い分ければ良いのですから。

植戸さん2

アナログなモノ作りだからこそ深まる生徒との関係性

リピート率の高さを生む次の要素は「関係性の深さ」です。これについては、前述の「場づくり」も、関係しています。場づくりによって、生徒同士の交流が深まれば、関係性も深まります。また、先生の声掛けやコミュニケーションも、関係性を深めます。植戸さんの場合、それだけではなく、関係性を作るための物理的なアプローチもされています。一つは、手作り新聞です。ここには、植戸さん自身の近況をつづったりしています。それによって、生徒さんは、親近感を持ちます。植戸さんは、フェイスブックもツイッターもやっていないそうです。それでも、アナログな新聞は、充分に関係性を深めてくれます。また、イベントなどの際には、手作りのメダルを作って、子どもにあげるそうです。作るのは結構大変ですが、その分、心は伝わります。

植戸さん3植戸さん4

こうしてみていくと、植戸さんの教室は、特別なことをしているわけではなく、当たり前のことを、丁寧に、思いを持ってやっていて、それが驚異的なリピート率と安定運営に繋がっていると言えるのではないでしょうか。

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