第7回育児セラピスト全国大会2016「あそびをまなぶ」

あそびをまなぶ

目次

1日目・スキルアップ講座

「プレスクールあそび発達インストラクター養成講座」

毎年、全国大会の前日の土曜日は、スキルアップ講座として、新しい講座のお披露目をしています。毎年、新コンテンツを真っ先に受講できるこの0期は、濃い方たちが集まります。トレーナーをはじめ、過去の優秀実践者の方やお付き合いの長い方々と、新しい方々が入り混じって、とても深い学びの場を形成します。今年も東京、大阪の両方で、素晴らしい場を作ることができました。

今年は、幼児教育の大本命である3歳から6歳の幼児教育メソッド「プレスクールあそび発達」を0期としてリリースしました。もともと「あそび発達」は、『嘘のない本当の幼児教育を問い直したい』という思いから生まれた講座です。そして、その答えとしてたどり着いたのが「あそび」です。発達心理学者のウィニコットが言うように、「遊ぶことこそが普遍的」であり、幼児教育とは遊ぶことに他ならないのです。それこそが「本当の幼児教育」です。

出来るか出来ないか、早いか遅いか、次の段階へ、もっと高度に、と子どもをまくしたて、他の子どもと比較をしてしまう親や教育者は少なくありません。それが正しいやり方だと信じて・・・。すると、やがて遊びは、遊びでなくなり、子どもは、発達の機会を失うのです。

あそび1あそび2

だからこそ「本当の幼児教育とは何か!」について向き合った幼児教育メソッドとして「あそび発達」を提供することに大きな意義を感じています。そのような思いをこめて、今回の0期講座の講師を務めさせていただきました。

まず、「あそび発達」の基本概念として、ウィニコットを学びました。ウィニコットは、遊びにおいて、子どもと母親の間に形成される「潜在空間」の重要性を説いています。それは、簡単に言えば(簡単に説明するには限界があることは承知の上で)、「二人の頭の中にのみ存在する独自の非現実的な場」ということになるでしょう。つまり、現実の遊び場や公園、玩具や教具といったものではなく、それを超えた想像の世界と、そこに生じる感情と体験そのものが「場」ということになります。それを、ウィニコットは遊びの本質と捉え、ゆえに母親(あるいは保育者、教育者)の存在が重要である、としています。

このことを前提に、話は脳科学へと移ります。脳の発達とは、何なのか、子どもの脳は、生まれてから、どのようにして発達するのか、ということを見ていきました。最初は、生きるために必要な脊髄から始まり、感情や運動系に関連する脳幹、そして高次精神機能をはじめとする高度な機能を司る前頭前野に関連する大脳と順番に発達していくという脳科学の基礎を学びました。

さらに、これを前提に、大脳生理学としての教育を考えました。確かに、高機能な脳を育てることは優秀な人を育てるかもしれません。しかし、人のパフォーマンスは、脳だけでは決まりません。脳を操るのは心です。心が健全でなければ、高機能な脳をうまく操ることは出来ません。また、健康な体がなければ、行動は制限されてしまいます。つまり、高いパフォーマンスを引き出すには、脳と体と心のすべてが重要なのだということを確認しました。そして、それは、「心」という土台が一番下にあり、その上に「体」、そして「脳」という順番でピラミッドを形成しており、それらの発達がらせん状に遂げられて成長するのです。ピアジェは、このことをシェマの同化と調節と呼んだのです。

子どもの学びサイクル

さらに、話はIQの話に移ります。「IQは遺伝で決まるのか、環境で決まるのか」という問題です。これについても、両方の説が唱えられており、どちらも、もっともな研究発表がなされていますので、それぞれの立場の学説を検証していき、この講座におけるある結論を出しています。

さらに、話は、最新研究に移り、「そもそも高いIQが、人の幸せや、物事の達成を左右するわけではない」という核心に入っていきました。これからの幼児教育の世界では、高いIQを求めて努力することは、もはやナンセンスになるでしょう。笑い話と言っても良いかもしれません。ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン博士の研究は、それを見事に示唆してくれています。彼は、ある教育プログラムを施したグループと、そうでないグループの40年間に及ぶ追跡調査を研究し、ある結論を示唆しました。5~6歳という幼児期における幼児教育への投資は、10年後の高等教育に、20年後の仕事や収入や健康にさえ良い結果をもたらし、それは、40年後も続くと結論付けました。そして、その幼児教育の内容として、ヘックマンが重視したのは、「非認知スキル」と呼ばれる非IQ系のスキルを育てることでした。IQをはじめとする「認知スキル」については、非認知スキルを育てる過程で、相乗的に伸びるものの、その優位性は4年以内に失われたが、非認知スキルについては40年後も失われず、よき人生を作るファクターとなった、と言うことを学んだ。

このことは、親も、保育者も、教育者も、直感的には了解していたのだが、ヘックマンは、そのことを科学的に、そして長期の追跡研究で証明して見せてくれた。講座では、そのことの意味を確認しました。

こうして理論を学んでしまえば、メソッドの意味は、本質的な領域で伝わります。「遊びが遊びでなくなる」ようなマネはしない指導者になるためにも必要なことです。まず、メソッドに入る前に、「あそび」の定義の確認をしました。もともと「あそび」の語源は、「悠(ゆう)」から来ていて、「のんびりしている」とか「物事にゆとりがある」という意味があります。また、あそびの条件は「無目的で意味のない活動」です。たとえば、車のハンドルには、必ず「あそび」といって、ハンドルを動かしても曲がる動作に入らない「余白」があります。これがないと、運転は緊張に満ち溢れたものになってしまうので、乗用車のハンドルには、必ず「あそび」が設けられています。こうした「あそび」の定義を確認した上で、具体的にメソッドを学びました。

あそび3あそび4

「プレスクール・あそび発達」では、ひらがなや数字、英語などのお勉強を「あそび(悠)」として楽しめる「あそび」を提案します。また、こうしたお勉強のような学力に関係する「認知スキル」を、感覚力・読解力・文章力・数字力・英語力の5科目にまとめ、それぞれを育むメソッドを学びました。

さらに、ヘックマンが重視した「非認知スキル」を、やり抜く力(GRIT)・集中力(Concentration)・自己肯定感(Self-esteem)・協調力(Cooperation)・コミュニケーション力(Communication)の5科目にまとめ、それらを育てる「あそび」をメソッドとして学びました。特に、「非認知スキル」は、3歳から6歳のこの時期の遊びの中で活発に育まれるスキルで、大きくなってから身に付けるのは困難なスキルとして、近年重要視されています。さらに、この「非認知スキル」は、記憶に頼った頭の良さではなく、応用力や工夫、読解力、理解力といった根本的な頭の良さにつながる資質です。そのため、幼児教室だけでなく、子育て支援や、保育、看護の現場において非常に重要な要素となります。

「プレスクールあそび発達」のメソッドは、J.ヘックマン博士が重視したのと同様に、非認知スキルを中心に据えています。非認知スキルを育む「あそび」に取り組むことで、認知スキルも養われる。スキルはスキルを育てるのです。そのため、一般的にお母さんたちが求める認知スキル系あるいはお勉強系のアクティビティよりも、非認知スキル系あるいは人格形成のためのアクティビティが重視されています。それは、「いま出来るようになること」「すぐに結果として見えてくること」に目を向けるのではなく、「10年後の学業において花開くこと」、「15年後の就職で結果が出ること」、「40年後の人生の幸せに貢献すること」に目を向けています。そのために最も需要な時期こそが、幼児期なのです。

幼児期に「どう遊んだか」は、将来の幸せ度を左右します。でも、あまりに先の事なので、親たちはそれを実感できずに、「今できること」「すぐに表れる成果」に期待してしまいます。それは、親として当然の欲望です。でも、より大事なのは、「どう遊ぶか」であり、遊んだ先の結果として、様々なことができるようになるのです。決して「出来るようになること」が目的ではありません。むしろ「無目的にただ遊ぶ」ことを応援すること、その価値を親に伝えること、それが「あそび発達インストラクター」の役割りである、ということを受講生全員で確認して、講座を終えました。

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