今、社会に求められているアタッチメントの力

あそび+発達心理学×f^2=アタッチメント教育
(2014/9/25)

“教育”支援も新たな視野に/「あそび発達インストラクター」養成へ

「第5回日本アタッチメント育児協会全国大会」が11月1日から2日、東京都板橋区の淑徳短期大学部で開催される。テーマは「あそび+発達心理学×f^2=アタッチメント教育」。廣島大三理事長に大会の概要と企画趣旨について聞いた。併せて特別講演の内容(予告抄録)を紹介する。

廣島氏

「本協会はこれまで、育児を視点に親と子のアタッチメント(愛着関係)を考えてきました。今回は育児から一歩進め、教育まで考えていこうとの思いを込めて、このテーマを考えました。我々が対象としている0歳から6歳までの子どもの教育は遊びを媒介としています。遊びの営みと発達心理学が出会い、そこに愛情変数fの2乗を掛け合わせる。それがアタッチメント教育です」と廣島理事長は説明する。

昔は乳幼児期に親がちゃんと子育てすれば、学齢期になると学校が子どもを教育してくれた。ところが今は、ちゃんとした小学校生活を送るためにどこの幼稚園に入園させるかなど、親が子どもの教育についてプランを立てていかないと、うまく育たない時代になっていると廣島氏は言う。

「何を選び、何を避けるべきかといった判断をするには親も学ばなければいけません。もう一つの背景として、子育てにも多様化が進み様々な選択肢があるがゆえに、親が判断基準を見失ってしまっているという現実があります。例えば、今が0歳や1歳で幼児教室に入れるということも多くなっていますが、幼児教育メソッドの中には乳幼児に好ましくないものもあります。親は我が子の特性や性格を知った上で、子どもにとって良いものを慎重に選ばなければなりません。そのための正しい価値基準を親たちにきちんと伝えていこうというのが今回のテーマです」

同協会は新たに「あそび発達インストラクター」の養成をスタートさせる。全国大会1日目の「スキルアップ資格講座」の中で、その第1回目の養成講座を開く。「あそび発達インストラクター」とは、発達心理学に基づいて年齢に応じた遊びを指導するインストラクター。養成講座では具体的な遊びのメソッドや背景にある発達心理学の知識と、それを教えるためのスキルを学ぶほか、教育運営のノウハウも学ぶ。

2日目は特別講演、優秀実践者の表彰式などが行われる。ベビーマッサージインストラクタ―や育児セラピストの中から各分野で象徴的な活動をしている4人を表彰する。また、地域ごとに分けたグループで今後行いたい育児支援活動について話し合うグループワークも予定されている。

「今回は新たに”教育”という大きなテーマを掲げ、これから大切にしていきたいことを皆で共有できる大会にしたいと思います」

ベビーマッサージスキルアップ研修

ベビーマッサージスキルアップ研修に取り組む参加者(2013年度全国大会)

アタッチメントを築くスキンシップの極意
~オキシトシンの役割

山口氏

大会2日目には山口創・桜美林大学リベラルアーツ学群教授による特別講演が開かれる。テーマは「アタッチメントを築くスキンシップの極意~オキシトシンの役割」(仮題)。

アタッチメント(愛着関係)の基盤として「オキシトシン」という生理物質が注目されている。

「オキシトシンには親子の絆を強める、ストレスに強くなるなどの効果があります。また、学習効率を高める効果もあります」と山口教授は話す。このオキシトシンはベビーマッサージや抱っこなどのスキンシップで赤ちゃんが母親の愛情を感じた時に分泌されるという。

「赤ちゃんの目を見て話しかけながら、愛しい思いをこめてマッサージすると視覚、聴覚、触覚が刺激され、オキシトシンが効果的に分泌します。それによって脳の神経の配列が変わりストレスに強くなる、学習効率がよくなるなどの効果は一生続きます」

オキシトシンはマッサージを行う母親の脳でも分泌される。それによって母親のストレスが癒やされ、我が子への愛情がより深まっていく。つまりベビーマッサージは母と子双方のオキシトシン分泌を高め、アタッチメント形成を促進するといえる。

父親も赤ちゃんに触れることでオキシトシンは分泌されるが、母親とは異なる触れ方が必要だという。

「手足を動かす、くすぐるなど遊びの中で触れると子どもの社会性を高め、対人関係をよくします。母親が触れることで情緒を安定させ、父親が触れることで社会性を高める。それによって子どもの心がバランスよく育つのです」

山口教授は母親のスキンシップの質の違いが子どものアタッチメントスタイルにどう影響するかを知るため、ある実験をした。母子が同じ部屋で遊んだ後、母親が出ていく。その時と母親が戻ってきた時の子どもの反応を観察した。子どもの要求に応じて身体接触をしている母親に養育された子は戻ってきた母親に抱っこをせがみ、抱っこされると泣きやんだ。一方、身体接触が少ない母親に養育された子どもは母親が近づいても無関心だったり、抱っこだれても泣き止まなかった。前者は安定型、後者は回避型のアタッチメントスタイルを示したという。

健康心理学の専門家である同教授は心身とも健康な子を育てるにはスキンシップの他、自然の中で遊ばせて「五感をしっかり覚醒させる」ことが大事だという。

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