子どもにスマホは、百害あって一利なし

スマホ育児、スマホ教育って本当に子どものため?

子どもにスマホは、百害あって一利なし

電車などで、乳幼児期の子どもを、お母さんのスマホで遊ばせている光景をよく目にします。数年前から目にしていた光景ですが、最近では、もう当たり前の光景になってきたようです。中には、ベビーカーに乗っているような赤ちゃんに、スマホをさわらせて喜んでいるお父さんやお母さんも見かけます。この光景を見ていると、実生活の中でも、スマホで子どもをあやしたり、子どもにスマホで動画を見せて静かにさせておく「スマホ育児」の光景が浮かびます。

あるいは、iPad などのタブレットを使った幼児教室や幼稚園も話題になっています。いうなれば、スマホ幼児教育です。「スタンプアプリを使って、いろいろな種類のスタンプを画面上でペタペタすることで、指先の訓練と想像力に働きかけます。また、お絵かきアプリを使ったお絵かきでは、子どもたちは慣れてくると、様々なツールを画面上で使いこなし、創造力あふれる表現をします。こうした最新機器を小さいころから使いこなす子どもたちの将来が楽しみです。」などと、もっともらしい説明が加えられたりしています。

子どもにスマホは、毒なのかもしれない

発達心理学の観点から言いますと、こうしたスマホやタブレットは、子どもにとって、大切な「あそび体験」を汚し、「豊かな発達」を損なうものでしかありません。

赤ちゃんがスマホを何となくいじることが出来るのは、赤ちゃんがスゴイのではなく、タッチパネルの操作が、「あまりにも簡単」なだけです。赤ちゃんが軽く触っただけでもタッチパネルは反応します。そうして、画面が移り変わるのを楽しんでいるだけです。しかしそれらが起こっているのは、スマホの中の世界だけです。データが動いているだけです。それは、物理的に起こっていることではありません。

これは、赤ちゃんだけではなく、幼児教室でタブレットが使われているケースも同じです。スタンプ遊びも、お絵かきも、すべてタブレット上で起こっているデータ操作であり、ゆたかな 表現は、プログラムでしかありません。物理的なスタンプ遊びやお絵かきは、アプリよりももっと高度なスキルを必要とします。物理世界では、一つ一つのスタンプ、一本一本の線は、すべてが違います。インクの付け方、押す力加減、あるいはクレヨン運び、クレヨンの太さ、そうしたものが、すべて影響して、1つのスタンプ遊び、お絵かきが成立します。このプロセスを通して子どもは多くのスキルを身に付け、たくさんの発見をします。

「あまりにも簡単」が引き起こすバーチャルの弊害

ここでも、アプリの世界は、「あまりにも簡単」にスタンプもお絵かきもできてしまいます。しかも、その表現力は、大人が見て感嘆してしまうほどの出来です。しかし、それは実力ではなく、プログラムによるものです。

この「あまりにも簡単さ」は、子どもに「認知の歪み」を与えます。ここで言う「認知」という言葉は、心理学では「発達」と読み替えることもありますし、時には「頭のよさ」と読み替えることもあります。つまり「そうしたもの」に歪みが生じるのです。どういうことかと言うと、子どもの脳は、大人と違ってアプリのような仮想空間で起こる事と、実社会の物理空間で起こることを区別することは出来ません。具体的に言えば、ゲーム世界で、リプレイを繰り返し何度も生き返り、やり直せる経験は、実際の物理世界では通用しません。その区別がつかないということです。

アプリでスタンプを経験した子どもは、思うでしょう。「この世界は、なんと簡単なのだ!」と。しかし、物理世界ではそうはいきません。その現実に対して、子どもの脳は混乱します。まだ未発達な子どもの脳が混乱することによって、われわれ大人が想像もつかないような「歪んだ認知」を生むのです。これは、間違いなく弊害です。

子どもにスマホを持たせる恩恵はあるのでしょうか?

では逆に、スマホを子どもに使わせるメリットや恩恵は何かあるでしょうか。「子どもを、いつでもどこでも、気軽にあやせる」つまり、スマホ育児ですね。確かに便利です。親として助かるかもしれません。あるいは「最新機器に触れさせることが出来る」この時期の子どもに大事なのは、物理的体験であって、バーチャルではありません。また、最新機器に触れるのは、幼児期である必然性も見当たりません。どちらも、大人の都合を子どもに押し付けているのではないでしょうか。

スマホ育児は、アタッチメントにおいても弊害を生む

今度はアタッチメントの観点から、スマホ育児を見てみましょう。私は、こちらの方が、実は深刻だと思っています。スマホ育児で、スマホを持たせて遊ばせたり、動画を見させている子どもをイメージしてください。子どもは、一人でスマホを相手に、相当な時間を過ごすことになるでしょう。黙って夢中になっているので、お母さんは、そのまま他のことをしたり、大人同士で会話したりする自由時間が出来るでしょう。しかも子どもは泣いたりぐずったりしません。むしろ、ぐずった時に、便利に使う場面もあることでしょう。

子どもにとっては、本来なら、お母さんに相手されて、かまわれて、いっしょに遊んでもらう「アタッチメント・タイム」が奪われているのです。これは、頻度によっては、深刻な問題を引き起こしかねません。しかも、お母さんに問題意識はありません。

こうしたアタッチメント剥奪によって起こり得るのが、愛着欠如や愛着障害で、程度の差はありますが、言葉の遅れや発達の遅れ、発達障害、自閉傾向などを引き起こします。これは、特に低年齢の乳幼児期により起こります。つまり、赤ちゃんにスマホ育児は、思った以上に深刻な問題を引き起こす可能性があるのです。

アタッチメント剥奪について詳しくは、
「ご存知ですか?それ、スマホ・ネグレクトって言うんですよ!」をご覧ください

子どもにスマホは、百害あって一利なし

つまり、幼児期の「スマホ教育」は、認知の歪みを引き起こし、乳児期の「スマホ育児」は、愛着障害を引き起こす可能性があると言うことです。子どもにスマホは、百害あって一利なしです。 ご参考までに、私は、子どもの脳が大人の脳に成長する9~12歳までは、スマホは、子どもに与えない方がよいと考え、実際にそうしてきました。

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