育児セラピスト座談会vol.9「親子にも相性ってあるの?」

自己紹介

今回の育児セラピスト座談会のテーマは「親子にも相性ってあるの?」です。今回は、ファシリテーターをつとめる、日本アタッチメント育児協会の廣島大三とともに、2人の方に参加いただいております。

北海道から参加の小川玲奈さんは、看護師をしているかたわらで、保健師さんとともに保健指導を行ったり、ヨガ教室や耳つぼセラピー、カフェなど多彩な活動をされています。

もう一人は、宮崎県から参加の野﨑彰子さんです。3年前まで認定こども園の園長先生をされていて、いまは娘さんに跡を譲り学園長として園全体の運営に携わっておられます。また、日本アタッチメント育児協会の認定講師として、福岡の講座を担当していただいております。この3人で、今回のテーマを話していきます。

親子だって人間関係、だから相性はある

そもそも、われわれは「親子の相性」という発想をしません。わが子は平等に同じく接するものだと思っているし、それが自然なことだと思っています。しかし、親子関係だって、人間関係である以上「相性」というのは存在してしかるべきである、というのが心理学の立場です。

実際「親子にも相性ってあるの?」という問いかけをしたときに、多くの方が「わたしもそれが気になっていたんです」と反応したわけです。つまり、心のどこかで思ってはいたけど、表には出さずにしまい込んでいたテーマなのだと思います。

まずは、話しの糸口として、今回のテーマに対してメールでいただいた二人の方のコメントをご紹介したいと思います。

「親子の相性って、性別にも関係するのかな?と子育て中には良く感じた事です。我が家は上が娘で、下が息子でしたが、息子との方が話がしやすく、相性が合うな~と感じていました。現在、社会人となった2人とは、どちらとも話しがしやすくなり、子育て中に感じた違和感はなくなりました。」

「我が子は3人いまして親子の相性、絶対あります。もちろん理性で差をつけることは気を付けていましたし、どの子もかわいくはありますが…。保育士の仕事で様々な親子を見ていても父母どちらと相性がいいかとか建前と本音とか感じます。いろいろその場で参加したかったのですが、仕事で参加できなくて残念です。」

どちらの方も、2人ないしは3人のお子さんとの間で、相性の“よい・わるい”を、感じておられたようです。

長女が生まれたときから、相性を感じていた

今回参加のお二人は、いかがでしょうか?

野﨑さんは、お子さんが3人で、女・男・女だそうですが、その中の第一子である長女と相性が良くなかったと言います。おなじ女の子でも、長女と次女では、あきらかにこちらの感じ方が違っていて、それは「末子だからカワイイ」という類のものではなかったと言います。長女だと「カチン」とくるが、同じことを言っても、次女や長男にはそうはならない。長女が生まれたときから「この子は、わたしのライバルだ!」という感覚があったそうです。いまは、その長女も母親になり、そうした相性は気にならなくなったそうです。今年の全国大会のスキルアップ講座であつかわれていたアストロロジーも、そういう観点から興味深いとおっしゃいます。

小川さんは、男の子2人で、上が中3、下が小6で、二人のお子さんとの間で、相性の良し悪しを感じたことはないそうです。上の子は大らかで自由奔放、下の子は気配り屋さんで、どちらに対しても「この子はそうなのね」という受け止め方をしていたそうです。小川さんの場合は、お母さんとの間においては、どちらも相性がよかったのでしょう。そして、なにより、小川さん自身が、柔軟性が強く、なんでも受け入れられるタイプの性格なのでしょう。お子さん二人が真逆のタイプなので、通常はどちらか一方に共感的で、もう一方にはイラッとするということが多いと思います。それがなかったのは、小川さんの柔軟な性格のおかげだったのでしょう。逆に野﨑さんの場合は、生まれたときから、母の第六感で相性を感じ取っていたのでしょう。

一方で、小川さん自身が子どもだった時、自分とお父さんとは相性が悪かったことを思い出したそうです。特に思春期の頃などは、お父さんの考え方も言い方もイラッとしていたそうです。たしかに、相性というのは、心理学で言うところの「自動思考」レベルにおける反応ですので、お父さんが何か口を開けば、その内容に関係なく、間髪入れずにマイナス感情が湧いたのでしょう。そんなお父さんも2年前に他界されて、今では、そうした感情はなく、お父さんの言葉の意味や価値が理解できると言います。

相性のわるさに、親として罪悪感をもっていた

わたしの場合、4つ違いで2人の娘がおりますが、相性を感じることがありました。子どもが小さい頃は、次女と相性が悪いと感じていました。たとえば、同じことをしても、長女だと笑って済ませられるけど、次女だとカチンときてしまう。逆に、長女は、こちらの気持ちをわかってくれる場面が多いけど、次女は、こちらの期待とは違う受け取り方や反応をすると感じてしまうのです。これこそ、相性だったのでしょう。

コメントをくれた方が言っていたのと同様で、理性ではふたりを平等に接しなければいけない。しかし、自動思考で反応してしまうので、感情は動いてしまうのです。この相性の悪さに対して、親としてのわたしは、次女にある種の罪悪感を抱いていました。

これを解決する術として、わたしが辿りついたのは、さきほど野﨑さんが触れていたアストロロジー(占星術)です。一般的には星占いと言われますが、それほど簡単なものではない深淵な世界観のある太古からの知見という意味で、あえてアストロロジーと言っておきます。アストロロジーで観ると、わたしと次女の相性の悪さが、ピンポイントでわかり、そのメカニズムもわかります。「あ~、だからイラッとしちゃうのね」と合点がいく。逆に、長女との相性の良さも、ピンポイントで分かります。そうすると、長女や次女の存在とは関係なく、その中のピンポイントのある要素における相性の良し悪しが、論理的に理解できます。そうすると、その相性を、すべて星のせいに出来るのです。おかげで、わたしの罪悪感は消え去り、救われました。そして、星に基づいたコミュニケーションや、言い方、伝え方ができるようになり、役に立ちました。

アストロロジーが教えてくれた、相性とのつきあい方

じつは、子育てに「相性」を持ち込むことは、子育てをやりやすくする術なのではないかと思っています。親が悩んだり、葛藤したり、苦しんだりすることを和らげてくれます。そして、子育てそのものをシンプルなものにしてくれます。

私の場合、次女との相性の悪さをアストロロジーで知ることによって、逆にアストロロジー的に相性の合う側面を知ることにもなりました。そうすると、いっしょに夢中になれる何かがあれば、(相性のわるい)次女と私は、同じテンションと熱量で取り組めて、同じことを(相性のよい)長女としたときよりも、楽しく充実することがわかりました。そうして、いままで発見できていなかった子育ての楽しさを知ることができるのです。

そんな個人的な経験から、これからは、「相性」を知ったうえで子育てする、という考え方が重要になってくるのではないかと考えています。

「相性」を知ることは、お母さんの救いになる

これを聞いて、小川さんは「この視点は、子育てで苦しんでいるお母さんの助けになるのではないか」と言います。ご自身が産後うつを経験して、子どもとどう接していいのかわからなくなってしまったり、自分が子どもにした行動や言動を責めてしまう時期があったそうです。

「『自分が子どものことをもっとわかっていれば・・・』、『自分がもっともうまく対応できていれば・・・』そういう思いにとらわれてしまっていました。あの時に、このアストロロジーのようなものがあれば、合点がいったり、自分のせいにするかわりに、星の巡りあわせが悪かったんだ、と理解できて、もっと余裕をもって、楽しく育てできなのではないかと思います。だから、これをあの時知りたかったです!これは、多くのお母さんを救う考え方になるのではないかと思います。」と小川さん。そして、この話には、「とてもワクワクした」とおっしゃいます。

これまでの話を聞いて、野﨑さんは、相性がよくないと感じていた長女が思春期になってからのことを思い出したそうです。もともと外の世界に出ていく子だと思っていたので、高校を選ぶときに、ときには気持ちのぶつかり合いやお互いのライバル心なども利用して、地元ではなく外に出ることを応援し、高校から外へ出したそうです。長女さんは、そうして外に出てみてはじめて、お母さんとの関係性を振り返って、「お母さんで良かった!」といま振り返っているそうです。その意味で、相性の悪さや、感情のぶつかり合いや、ライバル心といったものが、野﨑さんと長女の間にあったのは、結果的に「よかった」と思える一方で、当時からアストロロジーを知って、娘の特性と自分自身の特性がわかっていたら、もっと良かったのではないかと思われたようです。

相性が合わない子ほど、のちに良い関係になったりする

これは、わたしの経験則でしかありませんが、小さいころに相性の良くなかった子どもは、大人になってからは、その親のことをより客観的に観て、人生の先輩であったり、師匠のような存在として親のことを観るようになる傾向があるのではないかと思っています。実際、野﨑さんの長女は、一周まわって「お母さんで良かった」と言い、野﨑さんの園を継いで、いまは師弟関係になっています。わたしの場合も、長女は、わたしのことを「父」として観て甘えてくるのに対し、相性のよくなかった次女の方は、わたしを父というよりも「人生の先輩」として活用傾向が強いと感じます。

平等に接するのでなく、公平に接する

これからの子育てにおいて、「相性」を把握することが、とても重要であることはどうも間違いなさそうです。一般的に、お父さんお母さんは、子どもには平等に接しなければならないと考えます。たしかに、その通りなのですが、それはまったく同じ対応をすることとは違うと思います。個性が違うのだから、姉(兄)と妹(弟)で接し方は違っていてあたりまえです。しかし不公平であってはならないわけです。

その意味で、ヒトの性格を分類することは、全体ではなく部分で観ることになり、また客観性をもって論理的に観ることにもなるので、全体否定や人格否定になりにくいのです。全体としては姉(兄)も妹(弟)も、その存在を認め、愛している、というのが公平さです。そのうえで、部分としての対応は、それぞれ違いますよ、という話になるわけです。

アタッチメント親子診断

さきほどから話に上がっているアストロロジーによる分類もそうですし、性格分類や心理分析なんかも、そういう使い方をすることによって、とても子育てに役立てられると思うのです。ちょうど、わたしがいまパナソニックさんと取り組んでいるのも、そういうコンセプトの親子タイプ診断です。

親のタイプ診断5分類と、子どものタイプ診断3分類で、それぞれの組み合わせ15パターンごとに、子育てアドバイスをするというものです。これは、心理学に基づいた性格分析によるものですが、この情報をお母さんが知っていたら、かなり育児はやりやすいし、楽になるし、質のよいものになると考えられます。

ここで、「その分類は、どこまで合ってるの?」という問題が出てくると思います。それについては、実際に回答したお母さん自身が、そう答えているので、違いようがないのです。その妥当性は、過去の学者たちがすでに検証してくれているのです。ただし、その診断結果を受け入れられない人もいるでしょうし、部分的には当てはまらないこともあるでしょう。しかし、妥当性のある性格分類は、少なくともベンチマークにはなります。また、自分自身や子どものことを客観視する材料になります。客観的にみることによって、腹を立てたり、感情的になったりすることなく、部分の問題にフォーカスすることができます。

たとえば、こうした「親子診断」を、ベビーマッサージ教室に来ているお母さんにやってもらえば、お悩み相談がもっと深いものになるでしょう。

子どもと関わる大人が「自分を知る」ことの重要性

ここまで話をすすめてきて、野﨑さんから、「親子診断はもちろんとても大切なのですが、それとともに、私たち“じいじ・ばあば世代”をはじめ、子育て支援の提供者や保育士など、子どもに関わる大人の性格診断も欲しいと思いました。」という意見をいただきました。

確かに、そのコンセプトは、わたし自身も全く同じことを考えていました。これについてじつは、パナソニックさんの「アタッチメント親子診断」は、親の部分だけを切り取ると、まさに大人の性格タイプ診断として使えるように作っています。「アタッチメントタイプ」「コミュニケーションタイプ」「ライフスタイル」3つの角度から、その人のパーソナリティを知ることができます。これは、まさに「自分を知る」ツールと言えます。

これについては、パナソニックさんより、当協会の受講生には、期間限定で試していただく機会を設けていただいています。受講生のみなさんには、後日メールでお知らせさせていただけると思います。

これは、いろいろな活用の仕方があります。

・さきほど野﨑さんが言ってくれたような「大人の性格診断」としても使えます。
・子育てを卒業した方が、当時を思い出して回答すれば、その当時のじぶんの葛藤や課題を振り返り、現在の自分や子どもと照らしてみることもできます。
・保育士さんが、少し苦手であったり、対応に苦労している園児と自分を設定して診断すれば、自分の性格傾向とその子の傾向が出てきて、個別の保育指針のような使い方もできます

小川さんは「これを親子教室でやってもらうことで、遊び感覚で、大切なことに気づくきっかけになると思います。お母さんが、自分のことを知って、自分も気づいていなかった自分の傾向に気づいたり、お子さんの性格傾向や相性を知ることによって、『これは、しょうがないな』とか『こういう性格なんだ』と納得できることによって、とても救われると思います。」とコメントしてくれました。

お二人の反応やコメントを聞くにつけ、この「相性を観る」ことや、「自分の性格を客観的に知る」こと、「子どもの性格を客観的に知る」ことは、大いに子育てに役立つという確信が持てました。

今回の座談会の感想

最後に感想をお聴きしましょう。

「子育てもふくめて、わたしたちが生きていくうえで、『まずは自分を知ること』で、どう振舞えばよいのかが見えてくると思いました。そして、『子どもを知る』ことで、ある種の割り切りができて、子育てがしやすくなったり、子どもとの関わりをもちやすくなる。それによって、次に目を向けることができるようになると思いました。また、自分が父親と相性が悪かったという話も、一周回って父親のことを尊敬できる気持ちになれたことを確認できました。今日の話を通して、ヒトは成長し続けて、前に進んでいける確信を持つことができました。ありがとうございました。」と小川さん。

「来年(2024年)早々に、パナソニックさんの実証実験に園として参加する予定だったのですが、今日3人でお話しができて、ますますそれが楽しみになりました。それと、この親子診断を、お父さん・お母さんだけではなくて、おじいちゃん・おばあちゃんなど、もっといろいろな人に『試しませんか?』と言えるのではないかと思いました。ますます来年が楽しみです。」と野﨑さん。

われわれ大人に必要なのは「自分を知る」ことだった

今回、小川さん、野﨑さんのお二人と「親子の相性」について話してみて、大きな発見をしました。それは「自分を知る」ということの重要性に、あらためて気づかされたことです。わたしが思っている以上に、お二人は「自分を知る」ことに食いついてこられました。

じつは、これまでも、わたしは「自分を知る」という内容を、上位の講座には盛り込み、なんとかして「自分を知る」機会を作ろうと試みてきました。知識や理論としてそれを伝え、ワークのなかで実際に取り組むということを10年以上取り組んできました。認定講師の野﨑さんは、受講して実際にやっておられます。しかし、講座における座学やワークを通して「自分を知る」というところに至ったという実感は、じつは薄いままでした。

今日、お話ししてみてわかったのは、大事なのは「手軽であること」と「わかりやすいこと」だったのです。知識や理論がわかっていることより先に、こちらが大事だったのです。これまで、わたしは、難しく考えすぎていたのかもしれません。

パナソニックさんと作った「アタッチメント親子診断」は、手軽で分かりやすいものです。コンセプトは、「親と子の性格を分類することで、子育てのアドバイスをする」というもので、お母さんが気軽に読んで参考にしてもらえるように作りました。

これに本気で取り組んだ結果、自分で言うのもなんですが、最終的にはかなり骨太で本格的なものが出来上がりました。だからこそ言えることなのですが、この親子診断の親のパートは、まさに大人が「自分を知る」ための最高のツールになります。

今日、お二人と話していて、そのことに気づき、それを確信しました。今回のテーマ「親子にも相性ってあるの?」の座談会は、「自分を知る」というところに着地したと言えるのではないでしょうか。

一般社団法人日本アタッチメント育児協会

理事長 

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