イクボス応援します

イクボスって、知ってますか?

先日、日経DUALというネットマガジンを読んでいて、「イクボス」という言葉を知りました。と言っても、何のことかわからなかったのでネットで調べてみると、ファザリングジャパンが2014年からイクボスプロジェクトとして提唱しているもので、こんな定義がされていました。

「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指します(対象は男性管理職に限らず、増えるであろう女性管理職も)。

ファザリングジャパンHPより

いよいよ、この考えが世に出てきた。そう思いました。しかも、150社以上の大手企業がこれに賛同しているそうです。

エングロスメント(育児のめりこみ現象)

なぜ、こんなに鼻息が荒くなっているかというと、私が10年以上前に育児セラピスト1級の中で「エングロスメント」として取り上げ、コラムにも書いていたことだったからです。まずは、そのコラムの引用をお読みください。

男性の仕事における、エングロスメントの効用

これは、父親であり男性である私独自の理論ではありますが、参考までにお話します。

子育てにおけるエングロスメントは、社会人としての幅を広げ、また仕事の上でも、成熟したワークスタイルを確立できると、私は考えています。

エングロスメントを起こしている父親は、親としてだけでなく、人間として成長し、円熟したと感じることは、研究の中でも、ある程度立証されています。

具体的には、「親になって自分に起きた変化」における質問を、1歳7ヶ月の子の親に行ったところ、エングロスメント(子育てにのめりこむ状態)が起きていると観察できる父親において、責任感がついた、寛容になった、忍耐力がついた、協調性が育った、包容力がついた、などといった回答が、特徴的な傾向としてあらわれ、エングロスメントを起こしていないと観察される父親には、こうした回答の傾向は、相対的に少なかったという、数田(1997)の研究結果です。

(中略)

とりわけ、会社において、部下に対する態度に「寛容」や「容認」「信頼」が生まれ、それによって、リーダーの資質が開花することは、ちょうど、子どもを持つ年齢の男性にとっては、非常にプラスの資質と言えるでしょう。こうした、「男性の育児参加」の社会におけるメリットを、これからは、積極的に打ち出し、企業ぐるみの出産・子育て環境を模索する必要があると、私は、考えます。

育児セラピスト1級テキストより

このコラムを書いたのは、ちょうど日本アタッチメント育児協会を立ち上げた年なので2007年、下の娘が小学校に上がった頃のこと。当時思っていたのは、このことに大企業が気づけば、マネジメントの在り方や企業の子育てに対する考え方が根本からかわるだろうな~、ということ。

エングロスメントしたパパは、
良きリーダーの資質を得る

ここで重要なのは、育児を通してエングロスメントを起こしたパパが、会社でリーダーになること。そのリーダーは、責任感、寛容、忍耐力、協調性、包容力といったリーダーとしての資質を子育てによって開花させた人であり、その効能を最もよくわかっている人です。だからこそ、部下に対して子育てに参加することを心から推奨し、応援できるわけです。そして、仕事だけじゃなく、子育てや家庭生活までも応援してくれる上司がマネジメントするチームは、成果を上げるに決まっているのです。

これからの企業における
リーダー育成のあり方が見えてくる

企業にとっては、見込みのある社員に「リーダー研修」などを受けさせるより、その社員に子どもが生まれたときに、育児休暇を1か月与えて、その後も定時退社できる環境を与え、エングロスメントを起こさせる方が、よほど絶大な効果をもたらすことでしょう。放っておいても、重要なリーダーとしての資質の数々を開花させるのだから。そして、この人を営業課長にして、特別チームを作って検証すればよいと思うのです。他の営業課よりも業績を上げ、かつ関係性の良いチームを作るはずです。

イクボスがんばれ!

イクボスは、まさにこれを企業内で実践している人たちということ。もちろん、文化として定着するには、まだまだ時間もかかることでしょう。それでも、かつてのような「子育ては、仕事の足を引っ張る」という考え方は、ずいぶん薄れてきています。むしろ、育児や家庭を仕事と同じくらい大事にする姿勢は、肯定的に受け入れられはじめているのではないでしょうか。

イクボスプロイジェクトで唯一残念なのは、「エングロスメント」の視点がないこと。(もしかしたら、ちゃんと入っているのかも)いずれにしても、私は、イクボスプロジェクトをこれからも大いに応援します。

一般社団法人日本アタッチメント育児協会
理事長 廣島 大三

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