子どもに「電子」は触らせるな!(2)

 今度は、幼児教室の例を見てみましょう。iPad などタブレットのお絵かきアプリは、豊富な色を選べてクレヨンや筆やペン、色鉛筆など、様々なタッチを表現できます。そして、何度も好きなだけ描くことができます。さらに、スタンプ遊びのアプリでは、指をペタペタすると、いろんなスタンプが押せます。ローラー式のスタンプもあります。子どもたちは思う存分スタンプ遊びが出来るのです。そのようなことを、ある大手幼児教室の先生が、ニュースのインタビューで答えていました。

 しかし、これも先ほどと同じです。「ゆがめられた体験」でしかありません。お絵かきやスタンプにおける「ゆがみ」は、もっと重大です。お絵かきも、スタンプ遊びも、タブレット端末上では「イージーすぎる」のです。そして、ここでも大事な物理現象が抜け落ちています。紙のお絵かきは、クレヨンや色鉛筆、ペンや筆の持ち方、力の入れ方によって表現が違います。うまく描けないこともあるでしょう。何を使うかで持ち方や描き方も違います。そして、それぞれに、匂いも違います。描いている感覚も違います。それらを五感すべてを使って感じながら、子どもはお絵かきをします。スタンプだって、押したときの力加減や押す方向によって、濃さが違ったり、うまく押せたり押せなかったりします。こうした「物理的要素」が、子どもの体験には、重要なのです。そうして失敗や成功を重ねて、スキルが上達するのです。そして、失敗があるから、成功の喜びがあり、それが次への好奇心につながるのです。失敗のないスタンプ遊び、指でなぞればその通りに描けるお絵かきというのは、現実の物理世界には存在しないのです。

 さて、この「ゆがめられた体験」は、単に意味のない体験なのでしょうか?私は、むしろマイナスの体験となると考えています。スマホやタブレットでの遊び体験は、体験自体がバーチャルであるがために、「認知の欠陥と混乱」を生むからです。「認知の欠陥と混乱」は、認知形成の途上にある子どもにとって大きなマイナスを植えつけます。もちろん、実際のリアルな体験と組み合わせて行えば、大きなマイナスにはなりませんが、それでも「認知の欠陥と混乱」がゼロになるわけではありません。つまり、子どもにとって、百害あって一利なしであり、選択の余地なく子どもに触らせない方が良いものだと、私は考えています。そして、これは、私の感情論ではなく、認知発達の観点から考えれば、明白な事実です。ただし、実際の事例があるわけではないので、断言はしません。あくまで仮説です。

 でも、良く考えてみてください。なぜ、わざわざスマホ やタブレットで遊ばせる必要があるのでしょうか?そこに優位性があるとすれば、いつでもどこでも、という「便利さとお手軽さ」、そして「わが子が最先端電子機器を操れることへの優越感」くらいでしょうか。どちらも、親の都合でしかありません。子どもにとっては、リアルな遊びの方が、よほど楽しいはずです。
 そして、もう一つ弊害があります。それは、子どもが一人で集中してしまうことです。すると、親はついついそのまま一人で遊ばせてしまいがちです。そして、親が関わって一緒に遊ぶという「アタッチメントの機会」が奪われてしまいます。これは、ある意味「認知の欠陥と混乱」よりもマイナスが大きいかもしれません。そして、厄介なのは、多くの親は、こうした事実を知らずに、この「iPhone や iPad での遊び体験」を、時代を先取りしたという優越感と共に肯定的に受け入れているということです。

 では、これら電子機器は、いつごろから子どもに触らせても良いのでしょうか?子どもは、学童期前半(9歳前後)くらいまでは、バーチャルとリアルを線引きする論理性を持っていません。つまり、画面上の世界と実際の世界を、大人のように区別しないのです。そのことから考えると、早くても9歳、できれば12歳くらいまでは、遠ざけておきたいものです。これは、ポケットゲームも全く同じことです。

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