お悩みSV・オンライン会場ルーム1「保育園のせいにする親御さんに、どう対応したらよいでしょうか」

恒例!お悩みスーパーバイズ 2022

スーパーバイズとは「今抱えている問題・悩み」をグループごとに話し合ってもらい、それに対して当協会理事長の廣島のスーパーバイズのもと、参加者全員からも意見をもらう、というものです。

保育園のせいにする親御さんに、どう対応したらよいでしょうか?

熊本県の吉野さんが、代表してお悩みを発表してくれました。
最近のお母さんの中には、家に帰って、自分の子どもの機嫌が悪いと、次の日に「昨日、家で、ずっとグズってたんですが、保育園で何かあったんですか?」と言ってくるケースがあります。担当保育士からすると、そのお母さんの子どもさんは、「家でもう少しかまってあげて欲しい」という懸念を持っている子だったりします。
そういうお母さんに、「おうちで、もっとお子さんのことを相手してあげて欲しい」ということを伝えたいが、若い保育士は、うまく伝えられる自信がないとか、逆に怒らせてしまうのが怖いとか、「子育ての経験もないのに」と言われてしまったりした経験があって、なにも言えない場面があります。
いまのお母さんは、昔に比べると、気を遣わなければいけない人が多くなっていると思います。こういうお母さんに、若い保育士でもできる良い伝え方、あるいは、アドバイスなどありますでしょうか?

この悩みに関連して、秋田で小規模認可保育園を運営し、園長も務める高橋さんが、今の保育園の現状を話してくれました。「いまの保育園は、保護者の意向に合わせることが“あたりまえ”になっているから、保育園の意向を伝えるのは、昔よりもむずかしくなっている。」

これは、ある意味で社会問題と捉えてもよいものだと私は思います。つまり、「保育園がサービス業化している」という問題につながっています。保育園は、サービス提供者で、保護者はお客さんという暗黙の関係性が、社会に出来上がってしまっています。これは、今日発表してくれた竹安さんや佐伯さんのいる小学校や中学校の現場でも、同じことが言えるかと思います。

昔のように「先生が言うのだから、聴いてみよう」とか、「先生に教えてもらおう」という姿勢を、保護者に期待するのは難しいでしょう。それは、いまの保護者の社会性がなくなっているのではなく、社会における保育や教育の扱いが、サービス化していることに問題があります。

『保護者は、子どもに起きた問題行動を保育園のせいにする。保育園としては、子どもの問題は、園だけでは解決できないので、家庭の問題にも目を向けてほしい。お互いがストレートに意見を言い合えば、正面対決となってしまう。サービス業化している構造では、保護者の意見がとおってしまう。けっきょく保育園は、何も言えない。』こんな状況の中で、保育園として何ができるか?どうすれば伝わるか?

心理学は、よい方法を提案してくれています。

「話しをななめ上か、ななめ下にズラす」

「事実の積み上げをする」

子どもの問題行動の話をしているのですが、それを少しズラして答えます。「今日のお子さんは、〇〇のときは機嫌よくできていましたよ。」「□□のときは、積極的に楽しそうに取り組んでいましたよ。」「△△のときは、グズって泣いてしまったけど、保育士が抱っこしてあげたら、すぐに機嫌をなおして遊んでくれましたよ」・・・・こんな風にして、その日の子どもの様子を、事実のみの積み重ねで伝えます。

このとき「〇〇だと思うんです。〇〇と感じました。」といった主観的な表現をしないで、「〇〇でした。」という事実だけを積み重ねます。すると、事実の先にある意味が、保護者に伝わります。

今日は保育園で、楽しんだことも、積極的にできたこともあった。グズったり、泣いたりもしたけど、その都度解決して、機嫌をもどして、最終的には楽しむことができた。これらは、事実として、保護者に伝わります。

そのうえで、「〇〇くんは、抱っこしてあげると、すぐに機嫌をもどしてくれますね。立ち直りが早い子です」などと付け加えます。これを聞いた保護者は、「抱っこをすると機嫌がなおる」ということと「わが子は、立ち直りが早い」という事実を持ち帰ります。これが、「家でグズったときに抱っこする」という“こちらが保護者に期待する行動”につながるかもしれません。このとき、「ネガティブな事実」を伝えつつ、「よい事実」で終えることが重要です。

いずれにしても、若い保育士さんにとっては、むずかしいかもしれません。なので、吉野さんたちベテラン勢が、お手本を見せてあげることが大事だと思います。

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