発達においては、バランスと順番が大事

発達心理学者ピアジェの認知発達論によると、子どもの発達には次の4つの段階があるといっています。

1. 感覚運動期(0~2歳)
2. 前操作期(2~7歳)
3. 具体的操作期(7~12歳)
4. 形式的操作期(12歳以降)

それぞれを簡単に説明してみます。

1. 感覚運動期(0~2歳)
五感をはじめとする感覚と手の動きなどの運動によって、ものごとを認識する。この時期は、原始的な感覚に基づいた認知をする。
2. 前操作期(2~7歳)
仕組みや機能を理解するようにはなるが、論理的な理解ではなく、見た目に基づく直感的理解。この時期には、模倣能力もついてくる。
3. 具体的操作期(7~12歳)
具体的な事物に対しては、論理的思考が可能になるため、見た目に左右されずに、論理的に理解する。目の前の結果に対して理由付けができるようになる。
4. 形式的操作期(12歳以降)
具体的なものや、目の前の事象ではなく、仮想的な場面や命題のみで推論する本格的な論理的思考ができるようになる。この時期以降、論理的操作において知能は、急速に発達する。

上のような段階を経て、子どもは認知発達を順番に遂げていくものです。

これによれば、感覚運動器、前操作期である0~7歳くらいまでの子どもは、五感に基づく直感的な理解をしているということです。言い方を変えると、この時期は「右脳的」であると言えます。

乳幼児期の子どもは、一般に脳の働きにおいては、右脳優位であると言われ、それが、左脳優位にかわるのが、9歳前後といわれていることを考えても、納得がいきます。その後、具体的操作期である7~12歳、ちょうど小学生の時期に、論理思考が芽生えますが、依然として、感覚的、直感的理解をベースとした論理に過ぎません。

つまり、目の前にあるものや、具体性を持った事柄に対する論理性です。ちょうど、右脳優位と左脳優位の狭間である時期であることを考えると、納得がいきます。

最後の形式的操作期になって、ようやく本格的な論理性が発達します。仮説や仮想、記号などに基づいて論理を構築できるようになります。この時期に、論理操作に基づく知能は、急速に伸びます。
つまり、乳児期、幼児期~プレスクール期は、五感を中心とした遊びや直感的に遊べる遊びから学び、発達、成長するということです。

そして、小学校の間は、実体験に基づく経験的な遊びの中から学びます。
ペーパーテストや机に向かってお勉強というのは、発達の順番から言えば、12歳以降つまり、小6~中学生からでいいということです。ここでわかることは、こういう順番で、階段をのぼるように発達するのが、もっとも自然で、健全で、結果的には能力が伸びるということです。

こうした順番に反して、右脳的で感覚、直感的な知能が充分に発達しないうちに、早期教育やお受験などでペーパーテスト漬けにしたり、机に向かってお勉強させて、論理構築を教え込もうとすると、知能の発達において、バランスを崩すことが考えられます。

もう一つ違う推論をすれば、ゲームなどの仮想的な世界観の理解を要する遊びを、仮想世界のものとして論理的に理解できるのは、12歳以降と言えます。

これは、あくまで、私の推測の域を超えませんが、「具体的操作期」以前つまり12歳以前の子どもが、バーチャル世界の中でリアルな世界観を展開するゲームに従事した場合、その体験を、仮想世界のものとして理解することが出来ず、現実区別がつかなくなってしまうことが考えられます。それによって、知能の発達の順番が崩れ、バランスを失うことも考えられると思います。
不用意にゲーム批判をするつもりはありませんし、ゲームを全面否定するつもりも、煽るつもりもありませんが、こと小学校の低学年より小さい子に対するゲームの影響は、見過ごせないと思えます。

最近、ポケットゲームに終始取り組んでいる小学生くらいの子どもの姿を、最近よくみかけます。旅行先等、家族で遊びに来ているであろう場面でも、情緒的な関わりを求めることなく、一人もくもくとゲームと向き合っている姿を見ると、少し不安を覚えずにはいられません。

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