産科病棟での「誕生からの母子関係作り」のために ~アタッチメント形成を促すベビーマッサージのすすめ~

看護師、助産師による出産直後からのベビーマッサージ指導

最近、産科やNICU病棟の看護師や助産師が、ベビーマッサージ インストラクター資格を取得し、出産直後からのベビーマッサージの取り組みを推奨する病院が増えています。

こうした「出産の現場」における、ベビーマッサージの意味は、ひときわ大きく、そして深い意味があると言えます。カンガルーケアと同様に、出産~数週間という期間は、「ボンディング」の時期でもあり、この時期からベビーマッサージを行うことは、とても理想的なことだからです。

また、出産直後から、沐浴指導などと同様に、父親も参加した形での指導が行われる場合が多く、それによって、自然な形で、父親もベビーマッサージを行うケースが増えています。

ベビーマッサージと発達心理学の深い関係

もともと、ベビーマッサージの研究は、1970年代に、赤ちゃんの脳神経系の発達と母子関係の形成との関連性に学者が注目し、研究が深められ、低出生体重児に対する発達の促進という観点から、主に医学および発達心理学の分野において多くの研究が行われてきました。

つまり、ベビーマッサージの本来の研究目的に立ち返れば、「脳神経系の発達を促す営み」であり「良好な母子関係と家族関係を作る鍵」ということになります。そして、これらは、発達心理学の分野で研究されている「アタッチメント形成」による恩恵です。

つまり、ベビーマッサージというのは、アタッチメント形成のための営みのひとつであると言えるのです。

アタッチメントを促すベビーマッサージ手法

このアタッチメント形成を最も重要視して、発達心理学をベビーマッサージに応用した「ベビーマッサージ・メソッド」があります。 (社)日本アタッチメント育児協会 が監修・認定を行う ABMアタッチメント・ベビーマッサージ です。この手法は、同協会の主催する「ABM アタッチメントベビーマッサージ インストラクター養成講座」を受講し、学科試験と実技試験をパスした認定インストラクターによる教室で習うことが出来ます。

この講座を受講すると、育児セラピスト前期過程(2級)が同時に修了できます。この「育児セラピスト」では、発達心理学をはじめとする「育児」に対する専門知識や、母親との「対人援助法」を学べることもあり、特に看護師や助産師、保育士たちの間で、急速に広まっています。

院内ベビーマッサージ教室【実例1】

病院勤務の助産師の方が、土日に父親参加可のベビーマッサージ教室を、院内の企画として開いているケースがあります。出産直後で、父親も赤ちゃんへの興味が高いことと、土日で都合がつけやすいことで、父親参加率は、9割を超えるといいます。

ここで興味深いのは、ベビーマッサージ体験を通して、父親は「自分のほうが癒された」という感想を持ち、また、それ以来、抱っこが上手になったとか、沐浴やオムツ換えなどを積極的にしてくれている、という母親からの報告を、頻繁に受けるといいます。

院内ベビーマッサージ指導【実例2】

愛知県の病院のNICUに勤める看護師の方は、このような問題意識をもって、インストラクター資格を取得しました。

「生まれた直後からNICUに入院している赤ちゃんが、もう退院できるころになっているのに、親が退院を渋ることがあります。」

赤ちゃんが、NICUに入院している場合、母親に我が子を育てていく、愛していく自信が育たないケースが多く見られます。

この看護師さんは、入院中の親との面会時間を利用して、アタッチメント・ベビーマッサージを通して、赤ちゃんに触れてもらい、アタッチメント形成を促し、母子関係の形成を促すことで、お母さんに母親の自覚を促し、子育てへの自信を育てることをしています。

このほか、沐浴指導の際に、ベビーマッサージの指導を行っている例や、院内保育施設を利用して、一般の人も参加できるベビーマッサージ教室を行っている例など、さまざまな実例があります。

このように、病院の産科病棟や産院、助産院などにおいて、出産直後の母子に対して行われるベビーマッサージ指導は、今後ますます増えていきます。「出産直後」という最高のタイミングで、ベビーマッサージと出会うことができる母子(父子)が増えることは、非常に好ましいことです。

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