第10回育児セラピスト全国大会2019~この10年の子育て環境を振り返り、これからの10年を見据える~

大阪:ランチミーティング

第10回育児セラピスト全国大会
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大阪会場:お悩みスーパーバイズ

第10回育児セラピスト全国大会

I・Jグループ

兄弟姉妹の育て方について、同じ親が同じように育てているのに、育ち方には違いが出るのはなぜ?

グループの議論の中では、第一子は、待ちに待ったはじめての子どもなので、大事に育てるけど、第二子は、慣れもあって少し雑になるのではないか。また、親の経験値や余裕のあるなしも関係しているのではないか。また、第一子がイヤイヤ期のときに、第二子が生まれた場合、親の気持ちとして、第二子を大事にして、第一子をうとましく思ってしまうこともあるのではないか。家系的に受け継いだ方針なども関係するのではないか。子どもに問題が生じたときに、「私の育て方が悪かった」と思う前に、そうした回避することの難しい影響も大いにあるということを知っているだけでも、子育てが楽になる。そして、そういう考え方を示唆してくれる人の存在や、そういう話を言い合える関係を持っていることが、重要なのではないか、という結論になりました。

兄弟姉妹の子育てについては、古典児童心理学においても、さまざまな研究がなされていますが、まさにグループ内で検討されていたことが、当てはまります。第一子というのは、責任感が強く、社会の意をくむ性格になる。末っ子は、自由奔放で、性格的にも安定していてマイペースな傾向があります。真ん中子は、上と下の間で、いつも調整役を演じてきているので、バランス感覚が優れていて、あまり自己主張をしない性格になる傾向があります。つまり、子どもの育ちというのは、育て方だけではないということです。同じ遺伝子で生まれてきた兄弟姉妹を、同じ親が育てても、それぞれ全く違う個性で育つわけです。生まれた順番もあるし、家系的な方針もある、親子の相性だってあります。それにプラスして、その子の持って生まれた個性が開花するわけなので、「育て方」ということで説明のつく話ではないのです。では、「私の子育て」を振り返ったとき、何をもって「よし」とすればいいのか。それは、「アタッチメントを意識して子育てできていたか」ということではないでしょうか。愛情ある子育てができていたか、できていなかったか、という話ではなく、「意識できていたかどうか」が問題なのです。それができていれば、子育てを評価する必要は、どこにもありません。そして、最終的には「子どもは、なるようにしか育たない」という事実を受け入れればよいと思います。

これまで、わたしたちは「育て方が大事」ということを、言い過ぎたのかもしれません。どうにもならない外部要因だってあります。スマホやゲームのように、本当は子どもに触れさせたくないものでも、簡単には切り離せないものもあります。それも受け入れたうえで子育てしないといけない時代なのだと思います。だからこそ、本当に大事なことだけは、大事にして見逃さない態度が重要なのでしょう。

A・Bグループ

認定こども園の管理職をしています。園がスウェーデンの幼児教育を導入しました。簡単にいうと、子ども一人ひとりを自由にさせる中で、自由には責任がともなうのだということを教える保育です。外で遊ぶ、ご飯を食べるなど、すべて本人の自由意志のもとに、行動することが推奨されます。園の方針なので従うまでなのですが、現場で保育する中で、日本では馴染まないのではないかと疑問に思うところも多々あります。

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グループの議論の中で論点となったのは、スウェーデンの教育メソッドが、そのまま日本でも当てはまるのかということでした。保育園では自由を尊重されてきた園児が、一般の小学校に入って集団行動をせまられたとき、どうなるのだろうか?「自分で決めるのが良い」と言われてきたのに、小学校に上がったらこんどは、「みんなと合わせなさい」と言われてしまいます。そうした視点で言えば、現場として前向きにはなれない面が大きいという結論に達しました。

この議論について、A・Bグループのみなさんは、非常によく話し込まれていたと思います。まず考えなければいけないのは、グループ内の議論の論点になっている「ここは日本だ」という前提です。ヨーロッパは「個」を大事にする文化です。日本は「和」を重視します。つまり、「個人:全体」の違いがあるわけです。
責任を果たしていれば、個人が自由な主張をすることができる。これは欧米らしさであり、強みでもあります。一方で、個人の主張をおさえて、全体と協調する、みんなで一つの方向に向いて進む。これは日本らしさであり、やはり強みになっています。実際、こうした「和」の思想や「全体としての意識の高さ」は、世界的にも評価されています。 幼児教育に話をもどします。幼児期というのは、「考え方や思考の基本方針」が出来上がる時期です。心理用語でいえば、スキーマと言ったり、内的作業モデルと言ったりもします。「個の思想」も、「和の思想」も幼児期の体験や教育が大きく影響します。

そうなると、保育園で「個の思想」を身につけた子どもが、小学校にあがって「和の思想」を求められると、馴染まないケースが生じるでしょう。つまり、相談者さんの「現場感」は、ある面正しいと言えます。
しかし、園の方針を現場が変えるのは、難しいでしょう。そうすると、取れる方策は、「バランスをとる」ということになります。スウェーデンの教育メソッドを導入した場合、現場の保育士さんが疑問をもち、ネガティブな面を知りつつ保育にあたるのと、それを信じきって、何も疑問を持たずに保育にあたるのとでは、大きな違いがあります。
相談者さんが、前者の態度で保育されているのは、非常に有効なことだと思います。自由を大事しつつ、要所要所では全体の流れや、他の園児との協調を優先すればよいと思います。 この先、日本で教育を受け、日本で暮らしていくならば、「個」よりも「和」の思想の方が大事だからです。園としてはスウェーデン教育でも、現場は和を尊ぶことを教える、という形でバランスを取るというのが最適解だと思います。

C・Dグループ

体操教室の先生のお悩みです。3歳から9歳くらいまでの生徒さんと接する中で、発達が心配だと感じるお子さんが何人かいます。もし発達支援や療育を受けるなら早い方がよいとはわかっていますが、自分の違和感だけで、お母さんにそれを伝えてよいものなのか、それをどう伝えればよいのかわかりません。

これについて、会場のひとりの方から意見がありました。この方は、市の委託事業で、保育園や子育て支援の現場をまわって、発達に不安にあるお子さんを健康センター(保健師さん)へつなぐコーディネーターをされています。多くの場合、お母さんは気づいていなくて、保育士さんが気づいて指摘します。これまで3年間携わってきて、勇気をもってお母さんに伝えてあげたほうがいいと思えるようになりました。小学校に入ってから、発達に問題があったことが分かるのは、お母さんの精神的な負担は相当に大きいです。それよりも、取り越し苦労かもしれないけど、その可能性を指摘してあげて、早い段階で支援するきっかけを作ってあげる方がよいと思います。実情では、伝えても聴く耳を持ってくれないお母さんもいます。そこは、今後の課題だと感じています。

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非常に現場感のあるリアルなご意見です。この問題のテーマは、まさに「聴く耳を持ってもらう」ことだと思います。これについて、一つのアプローチをご紹介します。「事件を利用する」アプローチです。
まず事実として、何かしらの「問題行動」があるから、保育士さんの違和感になっています。この問題行動に対して、保育士さんが何らかの対応をします。そうして問題行動が改善したとします。これを1セットにして、お母さんと共有します。つまり「問題行動」「対応」「(うまくいった)結果」の三つをセットで伝えるのです。問題行動だけを伝えるのでなく、うまくいったときのことを、その時の対応方法とセットで伝えます。
「今日、〇〇くんには、こんなこと(問題行動)がありました。でも、こんな風に対応したら(対応)、うまくできました(結果)」
「ちなみに、おうちでは、いかがですか?」
このような対話をお母さんと行います。すぐに変化はみられないかもしれません。でも、続けていくと必ず変化が現れます。そしてお母さんの方から相談してくるのを待ちます。 「じつは先生、家でもこういうことが苦手で、ちょっと心配なんです。」
これが「聴く耳のスイッチが入った」瞬間です。
支援は、ここから始まります。
お母さんにとって、子どもの発達がうまくいっていない事実は、聞きたくありません。だから、気づかないふりをします。それを伝えるには、聴く耳を持ってもらうこと以外に方法はありません。今日は、この「聴く耳を持ってもらう」という考え方を持ち帰っていただきたいと思います。

E・Fグループ

お母さんにアタッチメントを伝えるということが、グループメンバー共通の思いだと確認しました。そのうえで、何を大事にしていくとよいのかを話し合いました。

グループの議論の中で、ベビーマッサージ教室を開催したときに、お母さんへのねぎらいを大事にしてあげたいという意見がありました。ついついお子さんの話になることが多いですが、「きょうは寒い中よく来てくれましたね。ありがとう」と、普段ねぎらわれることの少ないお母さんにフォーカスすることで、より伝わりやすくなるのではないか。

ここでも、納得感の高い議論ができていたと思います。前のグループの話の中に「お母さんに聴く耳をもってもらう」ことの重要性がありました。子どもの話をする前に、お母さんをねぎらってあげる、というのは、まさにお母さんの聴く耳スイッチを入れる働きかけになると思います。

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G・Hグループ

食育が注目される中で、どうやったら、お母さん方に興味を持ってもらえるのか、どう伝えるとよいのかについて考えました。

グループ内の議論では、お母さんによって食育を学ぶ目的意識が違うのではなか、という視点がありました。「頭を良くしたい」「健康に育てたい」「体を育てたい」など。お母さんの興味によって、伝え方や伝える内容も違うのではないか。また、何かおうちに持って帰って、簡単にできることを提案するとよいのではないか。

これについて、アタッチメント食育の講師をしている権先生がグループメンバーにいたので、実際に食育を教えてきて感じた話を伺ってみました。
「ひとくちに食育と言っても、お母さんによって、興味の行く先が違うということを感じます。「脳育」の視点で、頭をよくすることに興味がある方がいれば、「健康」に育つことに興味がある方もいます。入り口としては、それぞれ違うので、その人の興味に対応することを重視しています。その先の着地点としては、すべての生徒さんが「アタッチメント」に着地できることを目指しています。」

この権先生のお話は、まさに本質だと思います。お母さんはさいしょ「頭をよくしたい」「健康に育てたい」「大きな体に育てたい」ということに関心を持ちます。それをより本質的な価値に置き替えることが重要なのだと思います。頭が良くなるのは、栄養素のおかげではなく、そのような頭の使い方や思考法ができるようになった結果です。健康に育つのは、栄養素のおかげだけではなく、そのように育つ環境があってのことです。そうした本質としてのアタッチメントです。これは、食育に限らず、すべてにおいて言えることではないでしょうか。

K・Lグループ

「仕事と子育て」をテーマにしました。仕事から帰ってきて、家事もしなければいけない中、子どもの方に向けるエネルギーがない、子どもが病気した時も、仕事を優先させなければいけない、という問題にあたります。

これについて、グループで話し合いました。キャリアは大事にしたいし、老後の資金も貯めておきたいといった個々の事情があります。まず親として自分がどうしたいのか、10年後、20年後、自分はどうありたいのか、ということを明らかにすることが大事ではないか。その思いを伝えて、パートナーや子どもから理解を得て、協力してもらうところから始めるとよいのではないか。という結論になりました。

お母さんが仕事を続ける上では、どうしても犠牲になることがあります。仕事と子育てのバランスをとってやっていく必要があります。大事なことは守り、あきらめることはあきらめ、捨てるものは捨てるという決断も大事でしょう。
会場には、そうしてバランスをとって仕事を続けながら子育てをしてきた女性がたくさんいましたので、その中のおひとりに聞いてみました。
「わたしは、看護教員をしていたのですが、自分だけで子育てするのは無理だと諦め、実家の母にお願いをしました。そして、子育てのメインを母に任せ、わたしは、母のフォローをすることに徹しました。その方が、母との関係がうまくいくと考えたからです。」

この話は、非常に示唆深いと思います。結局のところ、「覚悟」が大事になります。おばあちゃんに子育てを託す、その代わりに、自分はしゃしゃり出ず、おばあちゃんのフォローに徹するというのは、賢い選択です。「おばあちゃん子」は、決して悪くありません。 そうすれば、安心して仕事に出かけることができます。
もし、子どもが母親としての自分を必要としている時は、自信をもって迷わずに休みをとる覚悟だけしておけばよいと思います。本当に必要な時に、1週間くらいの休みが取れない会社ならば、辞めることも考えた方が良いと思います。そして、いつも忙しいお母さんが、自分のためだけに1週間も休みを取ってくれて、ずっと一緒にすごしてくれたら、たいていの問題は解決します。

だからこそ、普段はきっちり仕事をこなして、いざという時は、自信をもって休む、という覚悟が大事ではないでしょうか。

【集合写真】大阪会場

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