手のかかる子どもが多くなってきて、保育士が対応しきれない

全国大会スーパーバイズでのお悩みを紹介します

2018年の東京で行われた全国大会のスーパーバイズ(お悩み相談会)での一幕です。ある若手保育士さんが、現場の悩みを提起してくれました。背景には、多動傾向のある子どもが、増えている現状がありました。

1対1でついていてあげないといけない子どもを、どうすればいいの?

「保育士が1対1でついていてあげると、おとなしいのだけど、そうでないと、悪さをしたり、問題行動をしたりする子どもがいます。一人だけなら対応できるのですが、こういう子が何人もいて、保育士の手が足りません。何かよい方法はないでしょうか?」

最近、よく耳にする事例です。こういう子が、必ずしも発達障害や多動であるとは限りません。衝動的にそうなっているというよりも、最初は、大人の注目を引きたいという感情の表れからはじまります。

とは言え、このまま放っておけば、衝動抑制の発達は阻害され、多動傾向が生じることになるでしょう。

相手にしてもらえないよりも、問題を起こして叱られた方がイイと思ってしまう子どもの心理

こういう子どもは、普段、お母さんに、充分に相手にしてもらえていなくて、「もっと自分のことをかまって欲しい」という気持ちがあるのです。そうすると、子どもは、相手にしてもらうために、わざと突飛な行動や問題行動をします。そうすれば、(たとえ叱られるとしても)相手してもらえるから、それを求めてしまうのです。

こういう子には、いっぱい「ギュー」っとしてあげて、いっぱい話を聞いてあげることが必要です。とは言え、保育士が、その場で対応してあげても限界があります。子どもの本当の寂しさは、家庭に存在するからです。また、保育士の手が行き届かない問題も残ります。根本解決は、お察しの通り、お母さんです。

お母さんを巻き込めれば、根本解決!ただし、伝えるのにも、知識と技術が必要です

でも、こういうことは、いきなりストレートにお母さんに言ってしまったら、怒らせてしまったり、不快な思いをさせてしまったりして、関係性が悪くなります。では、どうするか?

時間をかけて、お母さんに働きかける。これしかありません。そのためには、保育士自身が、対人援助発達愛着について、ある程度の知識を持っていることが必要とされます。つまり、お母さんの意識を変えるのに時間と労力をかけて、関係性を作ったらやっとスタート地点。実は、ここまでが大仕事なわけです。いざ、スタート地点に立ってしまえば、保育士の役割りは、お母さんのサポート。そして、家での母子関係が好転すれば、保育園でも落ち着くようになります。

残念ながら「お母さんを変える」必殺技はありません。やれるのは「実践」と「理論」の両建てアプローチに尽きます

園での子どもの問題行動には、少なからず母子関係や家族関係が影響します。これらは、園だけの努力では乗り越えられません。多くの場合、お母さんの意識を変える必要が生じます。

ベビーマッサージやキッズマッサージ、アタッチメントジム、あるいは子育てマインドフルネスといった「実践」は、お母さんの意識が、自然と良い方向に変わるための実践メソッドです。あるいは、実際に発達が気になる子への対応であれば、「アタッチメント発達支援」が必要かもしれません。

いずれにしても、心理学の「理論」をいくらかざしても、お母さんの心は動きません。しかし、「実践」をやっただけでは、具体的な実感にはつながりません。「理論」と「実践」の両建てが必要です。

実践のあとに行う、振り返り、あるいは、悩み相談。その際に、心に起きたことを理論として伝えたり、子どもの変化を解釈してあげたりすることで、お母さんは、腹に落ちて、少しずつ意識が変わっていきます。

理論なき実践は、エネルギーの無駄遣い、実践なき理論は、たわごと

つまり、地道なアプローチが必要なのです。不思議なことに、知識がついてくると、お母さんへの説得力は増し、信頼が増し、やがて発言の影響力が変わってきます。そうして、関係性が深まっていくとともに、頼りにされるようになります。

背景や理論、知識を知らずに、ただメソッドやハウツーを振りかざすのでは、関係性も信頼も築けません。とにかく実践に重きを置く方がみえますが、理論なき実践は、エネルギーの無駄遣いです。実践なき理論は、たわごとです。理論と実践の両建てが重要なのです。そのために、われわれ支援者は、勉強しなければいけないし、実践しなければいけない。実に地味で地道なことですが、それが、もっともパワフルなのです。

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