第13回育児セラピスト全国大会in2022 優秀実践者発表 子育て支援部門・岡田光代さん

岡田光代さん

第二の人生は、子育て支援で社会起業家に!

岡田さんは、三重県松阪市で「子育て・孫育て」をテーマに、個人事業主として起業して「みつよルーム」の運営をされています。そもそも子育て支援の活動に至った出発点は、「アタッチメメント・ベビーマッサージ インストラクター養成講座」を受講したことだったそうです。

はじまりは、アタッチメントとベビーマッサージ

もともと保育士をしており、その後、行政関係のお仕事をするようになりました。その仕事のなかで地域イベントに関わったり、ボランティアの方たちと接するうちに、保育や子育て支援において、もっと専門的に学びたい、専門性をもった関わりをしていきたいと考えるようになりました。そして、SNSで日本アタッチメント育児協会に行きつきました。 保育士の経験と、自身の子育て経験から、子育てで重要なのは、「乳幼児期の親子の関わり」であることは確信していました。「この思いをどうやって形にできるだろうか?」そう思っていた岡田さんにとって、アタッチメメント・ベビーマッサージのコンセプトは、この自らの思いとぴったり一致しました。 講座では、さまざまなワークをとおして参加者同士がつながり、専門知識と実践方法を学ぶことが出来ました。講座の最後に、ベビーマッサージのレッスンを企画して実施した経験は、なににも代えがたいものでした。保育士資格では学ばないことを得られたことに、興奮を覚えました。 「アタッチメント・ベビーマッサージは、きっと子育ての役に立つ」 「すぐにでも教室を開いて、伝えたい!」

ボランティアでの地域と関わりは、やがて生きがいに!

行動派の岡田さんは、まずは、みずからもボランティアで活動をはじめます。お父さんの子育て支援をする団体と知り合い、ここで「はじめてのベビーマッサージ教室」をおこないました。そうはいっても、最初は洋服を着たままの簡単なマッサージやふれあい遊びからのスタートでした。 こうして仕事をしながら、ボランティアの活動を続けました。行政の仕事と子育て支援のボランティア活動は相性がよく、公のイベントとつなげて幅を広げました。子育て講座をしたり、ワークショップを開いたりして、子育て支援と地域貢献の立場から関わりました。地域の人とつながって、自分の知識とスキルを役立てられることが、やがて岡田さんの生きがいとなってゆきました。その結果、10年以上この活動を続けることとなりました。

第二の人生で、挑戦がしてみたい、思いをカタチにしたい

地域のボランティア活動に生きがいを見つけた岡田さんですが、だんだんと新たな思いがふくらんでゆきます。 「このまま雇われた働き方で、自分らしく生きてゆけるのか?」 「自分のできることで、事業を起こしてみたい」 「このままではいけない、自分のしたいことは、1歳でも若いうちからやってみよう」更年期の危機感も手伝って、そう考えるようになりました。 行動派の岡田さんは、さっそく地域でおこなわれる起業のための勉強会に参加します。そこで行き着いたのは、コミュニティビジネスで起業することでした。その取っ掛かりとして、「わたしだからできることはなにか?」を自らに問います。岡田さんにとって、その答えは明確でした。 「不安や孤独をかかえるお母さんに寄り添い、笑顔で子育てできるサポート」

ボランティアから起業へ

こうして、2020年、岡田さんは個人事業主となり「みつよルーム」を開設します。 開業においては、これまで10年以上つづけてきたボランティア活動での人脈やつながりが役に立ちました。 逆に、ボランティアでは、経験しなかった苦労もあります。一番は、収益をあげることです。長年ボランティアに携わってきたため、岡田さんに頼めば、無料で何とかしてくれると思われてしまい、なかなか収入につながらないという現実が立ちはだかりました。 そこでまず、商工会議所の会員になり、個人事業主として登録することで、ボランティアとの線引きをすることから始めました。「みつよルーム」の開設にあたっては、広告や宣伝をはじめ、ビジネスに関するサポートも受けました。ボランティア時代の知人の助けもあり、なんとか開設にこぎつけました。 さらに、コロナ禍での開業だったため、「小規模事業者持続化補助金」の獲得にチャレンジして、見事採択され、補助金を得ました。この補助金によって、オンライン講座の環境整備、リーフレットや看板、ホームページなどを整えることができました。

みずから企画して、演ずるまでをおこなう出張講座と今後の展望

事業としては、「毎日の子育てが楽しくなる親子講座」の出張講座を、公民館や児童発達支援事業所で展開しています。児童発達支援事業所での講座は、インクルーシブ保育に対応して、ベビーマッサージとふれあい遊びをとおして、障がいのあるなしに関係なく、学び合う場を作っています。ここは、毎回定員オーバーで、定員を増員してもらって対応している状況です。 今後は、学校や、専門的な現場とつながって、この街の素材や歴史を活かして、この街だからこそできる方法で、アタッチメントを伝えてゆきたいと考えています。 ゆくゆくは、スタッフを雇って、自分は企画や制作に専念できる態勢づくりにチャレンジします。 ありがとうございました。

岡田さんの発表を聴いて・・・廣島の講評

岡田さんは、非常に稀有な人です。ボランティアを10年以上やって起業するというのは、まったく真逆の立場に移行することを意味します。相当な葛藤があったと想像します。わたしが、これまで数々の実践発表を聴いてきた中で、岡田さんのような事例は、ありそうでなかった“はじめての事例”です。 これを実現するには、ボランティア精神とビジネス感覚を両輪でまわす必要があったことと思います。お母さんへの思い、地域への思いとともに、事業化する実践力が必須です。岡田さんの場合、実践力が高いことが、特に目を引きます。これは起業家むきの資質と言えます。 どこでそう思ったかというと、いきなり商工会に入っているんです。子育て支援で起業する人はたくさんいますが、商工会に入るのは、なかなか出来ません。コロナ禍で補助金をとられていますが、これが採択される背景には、商工会の存在は欠かせなかったでしょう。 ここで言いたいのは、「商工会に入るといいよ」ということではありません。これくらいの行動をとれるだけの覚悟が、岡田さんにはあったということです。ボランティア時代からの子育て支援へ「思い」と、起業して事業をおこすための「実践力」の両輪をまわせるのは、本当に稀有なことです。これからの活躍が楽しみです。 岡田さん、ありがとうございました。

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