発達が気になる子とその親との関わりに悩む保育士たち

「気になる子」が年々増える中、現場は不安を抱えている

「気になる子」と聞いて、どんな子を思い浮かべるでしょうか?「発達の遅れや凸凹があるかもしれないと思われる子」という理解をする方が多いのではないでしょうか。発達障害と診断されているわけではないが「気になる子」は、年々増えているのが現場の実感ではないかと思います。

このことは、講座で多くの保育士さんや看護師さん、子育て支援関連の方たちの話を聞いてきた私の実感でもあります。そして、この件について現場は、混乱と不安に包まれているようです。

例えば、保育の現場を例に挙げてみましょう。保育士たちは、毎日の保育の中で気づいています。「あれ?この子ちょっと気になるなー」と。そういう子は、落ち着きが無かったり、多動傾向があったり、話が通じにくかったりします。それに対して、「何かしてあげられることがあるのではないか」と直感的に思っています。しかし、どう接するのが正解かは、わからないまま「今の自分の接し方で良かったのか」を自問自答しながら保育をする毎日です。これが、現場の不安を生んでいます。

現場の保育士は、専門家まかせでは済まされない現実

こうした状況に対応して、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士といった専門家が、年に数回くらい巡回する保育園もあります。しかし、専門家が巡回してくれても、保育士の方が、何を相談すればいいのかわからず、結局「気になる子」への具体的な対応を聞くことも出来ず、今の自分たちの関わり方で良かったのかも確認できない。

それでも、保育士たちは、毎日保育をしなければいけません。気になる子たちの対応もしなければなりません。そうした現実に悩み、苦しんでいます。

以下に、当協会の「発達支援アドバイザー」を受講したある保育士の受講動機をご紹介します。

うちの園は、月に 1 回支援会議を園内の保育士同士で行い、各クラスの気になる子にどのように関わったらいいか会議を行っています。

この支援会議に出席して、年々この会議で取り上げられる子の数が増えていっていること、そして、その子ども達にどのように関わっていってあげたらいいか、皆悩み手さぐり状態で苦しくなっている現状がありました。そして、さらに悩んでいるのは、その子たちの保護者にどのように接していくのがいいのかという保護者への対応でした。

専門家の巡回がありますが、その専門家へ、どのように伝えていいのかわからなくて、結局具体的な接し方など聞きたかった答えが引き出せないまま、苦しい気持ちになっていました。

そういった経緯があり、職場のみんなが抱えている苦しさや悩みが、少しでも解消されるのでは、そして、何より気になっている、どうにかしてあげたいと感じている子ども達に、よりよい関わりがしてあげられるんじゃないかと期待を込めて受講しました。

現場を知っているのも、子どもの日常を知っているのも、保育士です。しかし、その保育士が、専門家に「伝える術をもっていない」だから「必要な答えが専門家から引き出せない」。気になる子は年々増える中、保育士たちの不安は大きく膨らむばかりです。
では、こうした状況に対して、何が出来るのでしょうか?

「関わり方に、違いはない」というのは、目からうろこでした

「発達支援アドバイザー」を受講したこの保育士さんが、その答えを教えてくれています。
この保育士さんの受講後のお話をお聞きください。

目から鱗でした。健常児と変わらない関わりが大事なのだと、ただしより丁寧なアプローチや意図的な介入が必要とされているのだと。

気になる子には、健常児と違った何か特別な関わりや訓練が必要なのだと思っていました。でも、違うのだと。これは大きな収穫でした。

そして必要なのは、苦手を見つけて、そこばかりに目がいくのではなく、苦手を緩和すること。そして、何より大事なのは、得意を見つけて伸ばしてあげる事。

この視点が抜け落ちていることが分かったことは発見でした。そして、それはすぐに職場のみんなで共通理解して、園内の子ども達によりよい関わりができるようにしたいと強く思いました。

まずは園内研修で研修報告の場がありますので、そこで今回学んだことを報告し、職場内で知識の共有を行う予定です。

発達障害児の保育に、特別なことは何もない、でも知識は必要

発達障害児や発達凸凹の子、気になる子を保育・養育する上で、健常児と異なることは何もありません。ただ違うのは、健常児よりも手間と時間をかけて、丁寧な関わり、意図的な関わりをしてあげるという点だけです。(もちろん、細かく言えば、いろいろありますが、大筋ではそうなのです。)

そうは言っても、やはり知識は必要です。そもそも子どもへの対応は、10人10色です。発達障害児の場合、それがより顕著なのです。だからこそ、より細かな個別対応が求められます。メソッドやハウツーは、融通の利く健常児には対応できても、発達障害児には対応できません。必要なのは、大きな基本方針と、細かい基礎知識です。

大きな方針と知識は、親対応に関する不安も解消してくれる

さらに、この大きな基本方針と、細かい基礎知識は、気になる子の親に対応する際にも、説得力を持ちます。その子の「気になるところ」を具体的に伝え、それに対して「どうしていったら良いか」を提案できるからです。発達についての心配を、親御さんに伝える際に、揉めてしまうのは、結果として「ダメ出し」のように伝わってしまうからです。

例えば、次のような具体的な言葉かけができれば、親御さんはダメ出しされたと思うのではなく、前向きな提案と捉え、また保育士さんが、わが子のことを思ってくれていることが伝わります。

「お子さんは、こういうことが苦手なようなので、保育の中で○○を積極的にやっていきます。同時に、こういうことは、得意なようです。○○の遊びをすることで、この得意を伸ばしてあげられます。おうちでも、ぜひやってみてください。」

さきほどの「発達支援アドバイザー」を受講した保育士さんは、最後にこのように締めくくっています。

保護者へもアタッチメントの大切さをより具体的に伝え、共に子ども達がよりよく伸びで行けるよう、保護者と子どもの関わりの「道しるべ」になれたらと思います。そして、もし気になる様子が現れたときは、保護者と子どもに寄り添いながらオーダーメイドの支援プランをもってその子にとってよりよい保育を行っていきたいと思います。

子育て支援に、発達支援が含まれる時代

今回は、保育士さんの事例を例にお話ししましたが、これは、看護師さんや子育て支援の方、児童館職員さん、お教室の先生など、子どもと親に関わるすべての方に、適応していることです。

発達の気になる子や発達障害の子は、年々増えているのは事実です。これからの子育て支援は、こうした子どもとその親への対応も求められるようになってくるのだと思います。いや、もうすでに、そういう時代に突入していると言っても良いでしょう。

一般社団法人日本アタッチメント育児協会
代表理事 廣島 大三

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