われわれは、さまざまな人間関係に、「個」として対応することが必要不可欠な時代を生きています。それは、「ひとりひとりに合わせて対応をする」ということなので、簡単なことではありません。 わたし(あなた)と相手との「関係」は、それぞれの「個」によって変わります。子ども、夫・妻、きょうだい、親、友人、同僚、部下・・・一生にわたる付きあいの人もいれば、短い縁の人もいます。深い関係・表面的な関係、上下関係・並列の関係、われわれは、じつにさまざまな人間関係のなかで生活しています。
だからこそ、関わり方が違って当然です。目の前の「個」に合わせて関わる。一人ひとり違う「個」に注目し、その人を見立て、その人のための方針をたてる。
このことにおいて、われわれがテーマとしている“アタッチメント理論”は、人間心理の「構造と全体像」を教えてくれます。本講座で学ぶ“アドラー心理学”は、「個」の人間心理の「見立てと方針」を示してくれます。ともに活用すれば、可能性を無限に広げることができます。真の意味で、その人の人生に寄り添うことができます。それが「育児セラピスト・ライフサポーター」のコンセプトです。
この講座には、じつに、多様な業界、さまざまな立場、30代から60代と幅広い年齢の方が参加されます。
そこで語られる受講動機もさまざまです。子育てや子どもへの対応に活用したい人、アドラーを学びたい人・深めたい人、悩み相談やカウンセリングを学びたい人、よりよく生きる技術が学びたい人、社員やスタッフのマネジメントに活用したい人・・・
講座でおこなわれる自己紹介を終えたとき、他の講座とは少し様相がちがうことがわかります。講座に期待するもの、想定する対象者が、みんなそれぞれ違うのです。この傾向は、「アタッチメント・心理カウンセラー」により近いかもしれません。
じつは「アタッチメント・心理カウンセラー」と、この「育児セラピスト・ライフサポーター」は、『おなかからのアプローチと背中からのアプローチ』というような関係性にあると言えます。ボウルビイのアタッチメント理論は、「人というのは、こういうものだ」という構造が出発点となっています。それに対して、アドラー心理学は、「この人はこういう人だ」という個が出発点になります。それが、冒頭の『「構造と全体像」と「個の見立てと方針」をともに活用する』という表現につながります。
ここで、わたしの体験談として、妻との間に実際に起こった話をしましょう。10年以上のあいだ、妻とわかりあえなかった「あること」がありました。それについては、聞く耳さえ持ってもらえませんでした。アタッチメント理論、交流分析、ライフサイクル、精神分析など、これまでに講座化したさまざまな理論を持ち出して説得を試みても、いつも心理ゲーム(夫婦喧嘩とも言います)で終わってしまっていた件です。それが、アドラーの文脈に載せたら、妻はストンと腹落ちし、同意してくれたのです。しかも、車の中の雑談で。最後の一押しがアドラーだったのです。いまでも、わたしたちの夫婦関係を大きく変える出来事であったと回想します。まさに、おなかからのアプローチだけでは到達できなかった概念あるいは思考が、背中からのアプローチによって伝わったイメージです。
アドラーだけで、すべてが解決することはあり得ません。しかし、アドラーの視点がなければ、本当の解決にいたらないことがあるのです。このことは、これまでに学んだ他の理論についても同じことなのは言うまでもありません。だからこそ、われわれ育児セラピストは、複数の理論を学び、活用し、人というものを、多方向からメタ的に理解しようと試みるのです。
このことをお伝えしたうえで、「育児セラピスト・ライフサポーター講座」は、いったいどんな講座なのかをお話しします。講座をとおして、まず取り組むのは、「自分について知ること」です。
“自分”という人間は、考え方や行動にどんなクセをもっているのか。それは性格であったり、性分であったり、生き癖であったりします。アドラー心理学では、これを“ライフスタイル”と呼びます。ライフスタイルは、幼少期4~5歳ころまでにその土台がつくられます。われわれが生きるうえで、よくも悪くもこのライフスタイルがいつも発動します。問題に立ち向かう人・逃げる人、怒る人・悲しむ人、人のせいにする人、弱い立場をとる人、マウンティングする人・・・じつにさまざまです。
アドラー心理学は、その人がどんな「ライフスタイル」をもっているのかを知ることからはじまります。それによって、その人を見立て、「個」として理解しようとします。ライフスタイルを知った上で、「では、理想の自分はどうありたいのか」を考えます。そして、それを目指し、獲得できるように「勇気づけ」します。これについてアドラーは、こういいます。
「選択はその人次第。どんな自分にもなれる。」
講座では、アドラー心理学の基本概念を学んだうえで、さまざまな“セルフワーク”に取り組んで、自身のライフスタイルを見立て、吟味します。それをふまえて「理想の自分像」に取り組みます。
講座のねらいは、もちろん自分自身についてだけではありません。自分と関わるさまざまな人たちとの人間関係に活用することがメインです。自分自身の見立てをとおして、「ライフスタイルとはどんなものか、どういうところを見ればよいのか、どうしたら見立てられるのか」といったことが、経験として理解できます。こうして、理論と実践をとおして身につけられるのも、アドラー心理学の特徴です。
さらに、アドラー心理学をアタッチメント理論で読み解きます。アドラーの考え方は、じつに多くの点でボウルビイのアタッチメント理論と共通しており、親和性が高いのです。
たとえば、アドラー心理学の中核概念のひとつに“共同体感覚”があります。これは、自分の行動が自分だけでなく、相手のためになっている、さらには、自分が所属する共同体のためになっているという感覚です。アドラーは、言います。共同体感覚は、「人が生まれながらに持っている潜在的なもの」であると同時に「意識して育まれなければならないもの」と。この考え方は、ボウルビイがアタッチメントを語るアプローチと同じです。
このことが、冒頭で言ったことにつながります。アタッチメントが「全体の構造」から人を理解するのに対し、アドラーは「個の見立て」によって人を理解する。この2つのアプローチが、人間関係の問題を解決する上で、非常に有効なのです。
アドラーだけでは、全体が見えません。アタッチメントだけでは、個の傾向までは見えません。両方活用すれば、全体像の中の個を見つけることができます。
アドラーは、言います。
「すべての問題は、人間関係の問題である」
「人と人が関わるうえで、必ず問題は起こる」
大人も子どもも心が不安定になっている現代において、「安心して生きる」「安全な生活をおくる」という目先の目的のさらにその先にあるのが「よりよく生きる」です。そんなところにまで意識を向けるのは難しいことかもしれません。
それでも「よりよく生きる」ことは、人間にとって必要不可欠な命題です。自分に対して、子どもに対して、パートナーに対して、家族に対して、仕事仲間に対して、そしてもっと大きな社会に対して、「よりよく生きる」ことを働きかける。まずは、自分と自分のまわりの人間関係に対して行動を起こす。
それこそが、アドラーの言う「共同体感覚」であり、ボウルビーの言う「アタッチメント」です。わたしたちのまわりに起こる人間関係の問題には、終わりがありません。それでも、そのときその時を丁寧に対応する。そうすれば、わたしたちはみな「よりよく生きる」ことが出来る。アドラーもボウルビイも、そんな世の中を願って研究をつづけたに違いありません。
この講座は、子育て支援に関わる専門職として、親として、社会の人として、すべての人間関係における「よりよく生きる技術」を学ぶ講座です。
一般社団法人日本アタッチメント育児協会
理事長 廣島 大三
受講後にみなさまにご記入いただきました、講座アンケートをご紹介いたします。
育児セラピスト・ライフサポーター認定講座 通常受講料 | 214,500円 |
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育児セラピスト前期課程(2級) 取得者割引* | -77,000円 |
育児セラピスト前期課程(2級)取得者 総受講料 | 137,500円 |
1日目:10:00 - 17:30
2日目:10:00 - 17:30
※ 講座終了後に、講師へ質問していただく時間もございます。
宿泊が必要の方へ
事務局へご連絡いただければお近くのホテルをご紹介致します。
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