第5回 全国大会 開催レポート

■ シンポジウム開会のあいさつ

シンポジウム開会のあいさつ

今年の全国大会は、第五回目という節目を迎えました。仏教の世界では、「五」という数字は、何かと意味深い数字だということを聞いたことがあります。そこで仏教における「五」という数字について調べてみました。「五欲」「五色」「五戒」「五根」「五力」・・・ほかにもたくさんありました。

その中で私が着目し、大会の冒頭でお話したのは、「五根」でした。「五根」というのは、仏教の修行によって身に付ける基礎能力であり、五つの修行科目によって身につくものとされています。それぞれ「信根」「精進根」「念根」「定根」「慧根」の五つからなっており、最初に仏陀を信ずる力である「信根」からはじまります。「精進根」は、一言で言えば実践力、「念根」は観察力、「定根」は揺らがない力、「慧根」は智慧の力となります。さて、これら五つの基礎能力を、アタッチメントにあてはめて、「アタッチメント五根」として見てみましょう。

アタッチメントを信じる力にはじまり、優秀実践発表に代表される実践力の「精進根」、子どもや親に何が必要とされているかを見極める観察力の「念根」、活動を続ける揺るがない力の「定根」、学び続ける態度の先にある知識と知恵の「慧根」と、見事に「アタッチメント五根」として、それぞれ当てはまります。つまり、今年の節目は、「私たちの活動ややってきたこと、その見方や態度、関わり方、何を思ってそうしてきたか」といったことを、ここで改めて見直すことが、大きなテーマであったように思えます。

 

■ 全国大会テーマ

全国大会テーマ

そんな開会のあいさつから始まった第五回全国大会でした。今年の大会テーマは、

「あそび + 発達心理学 × f2 = アタッチメント教育」

この数式の核となるのは、変数「f」の存在です。この変数は、二乗されているところが、その影響力の強さを物語っています。「f」には、いろいろなものを入れることが出来ます。愛情、愛着、親、家族、先生、仲間、サポーター・・・様々なものが入り得るでしょう。「アタッチメント教育」とは、「あそび+発達心理学」に、こうしたアタッチメントを求める者と与える者による「変数f」を二乗して掛け合わせたものだ、というメッセージです。そして、「教育」というものに、いかにしてこの「変数f」の要素を組み入れていくのか、というのが、今回のテーマでした。

これまで、われわれは、協会の名称にもある「アタッチメント育児」を掲げてきました。それは、これから先変わることはありません。しかし、2015年からは、「アタッチメント育児」を教育にまで展開する必要があると考えています。ですから、この2014年の全国大会というタイミングで「アタッチメント教育」を掲げることには、大きな意味があると感じています。それは、「育児を教育として捉え、教育を育児として捉える時代」と言っても良いかもしれません。

幼児教育の低年齢化が進み、0歳児教育が一般化していく中で、目先の結果や、なんでも早く出来るようにさせようとする先取り学習が親たちの目を引き、0歳児や1歳児、2歳児に対して、そうした教育が施されがちなのが現状です。しかし、われわれは、教育の中でも、「子どもの育ち」を混乱させることのない教育、育児の中で当然大事にしていくべきものを忘れない教育、子どもの未来の可能性を大きく広げるための大きな土台作りの教育、そうした本質をしっかりとはずさない教育を子どもたちに与えることを、ご縁を持った親御さんたちに伝え続けていきたい。この理念こそが今回のテーマに「教育」という言葉を置いた所以です。

 

■ スキルアップ新講座「あそび発達インストラクター」

スキルアップ新講座「あそび発達インストラクター」

私どもは、毎年この全国大会の場で、新しい学びの講座を発表してきました。それは、私の中にずっとあったテーマもあれば、受講生や関わってくれている方々の要望から生まれたものもあります。「アタッチメントジム(体操)」や「キッズマッサージ」、「アタッチメント食育」などは、まさに、受講生の皆様からの要望から生まれた講座に他なりません。また、2012年にリリースしたアタッチメントヨガは、私の中にもともとあったテーマであり、受講生の皆さんからの要望でもありました。昨年2013年に発表した「大人の発達心理学・ライフサイクル・ファシリテーター」は、私が長年あたためていたテーマでした。

もう一つ長年あたためていたのが、今回2014年に発表した「あそび発達インストラクター」です。これは、先ほど述べた「アタッチメント教育」の理念
・ 「子どもの育ち」を混乱させることのない教育
・ 育児の中で当然大事にしていくべきものを忘れない教育
・ 子どもの未来の可能性を大きく広げるための大きな土台作りの教育
という3つの理念を掲げた幼児教育を提供することです。

この講座の中で、私は、こんなことを話しました。よくテレビで「○○すれば、□□になる」ということを学者さんや専門家の先生方が言って、その根拠を解説している番組があります。あれは、確かに本当なのだと思いますが、正確に言うと(・・・・という場合がある)(・・・という例もある)と心の中で付け加えて解釈してください。つまり、みんながみんな、そのようになるわけではない、いやむしろ例外の方が多い、もっと言えば、そこで言われていることの方が例外かもしれないのです。そして、子どもに対して、そうした「○○すれば、□□になる」式の論理を当てはめることは、リスク以外の何物でもありません。例えば、「○○メソッドをやれば、頭がよくなる、運動神経がよくなる」といったものも同じです。(・・・・という場合がある)ということです。

この講座では、最初に「幼児教育の在り方」を問いました。そして、頭がよくなる方法や、運動神経がよくなる方法、優しくて人間味のある子に育つ方法ではなく、そのようになる「構造」と「根拠」を扱いました。つまり、頭のよい子どもが育つための「構造」と、そのために必要な「あそびの根拠」言い換えれば「発達課題」を理解することです。それによって親が、自信を持って子どもの発達段階に合った関わりが出来るようになり、結果として「頭がよくなる」ための土台と基本要素を手に入れることが出来るのです。

ここで「土台」とか、「基本要素」という言葉を使っているのは、「頭がよくなる」のは、先の話だからです。われわれが幼児教育の中で見据えるべきなのは、学童期や思春期における「頭のよさ」です。決して、幼児期に学童期の先取りをすることではないと考えるからです。そういうものは「頭のよさ」とは言いません。単にほかの子より先に覚えたというだけです。「頭のよさ」とは、向学心や好奇心、問題解決力や応用力といった「存在」と「メンタリティ」の土台の上に、言葉や数などの「思考」を乗せた結果です。そして、幼児教育に問われるべきは、この「存在」と「メンタリティ」の土台をいかに大きく育ててあげられるかです。この基本的な考え方を、現代の幼児教育の現状を交えてお話しました。

その上で、根拠となる発達心理学を解説しました。ボウルビーの「アタッチメント理論」から精神発達を学び、エリクソンの「ライフサイクル理論」からは、発達課題を学び、運動科学における「運動あそび」からは、運動と発達を学び、ピアジェの「認知発達論」からは、知能や能力の獲得を学びました。そして、最後にウィニコットの「対象論」から、子どもの育ちにとっての「あそび」の重要性を学びました。そしてようやくここで、具体的に何をやるのかを提示しています。これらの理論背景に基づく「あそび」についてです。しかし、ここではまだ具体的な「あそび」というよりも、「あそびのテーマ」を扱い、「あそび発達」の概観を解説しました。ここまでで、私の講義は終了です。

そして、最後に、当協会の理事でもある細井香先生(東京家政大学准教授・医学博士)にご登壇いただき、「あそび発達」の具体的な「あそび」を、保育指針をベースに、7期に分けてそれぞれ解説していただき、この「あそび発達インストラクター」の学びは終了しました。

 

■ 桜美林大学 山口創先生講演「アタッチメントを築くスキンシップの極意」

桜美林大学 山口創先生講演「アタッチメントを築くスキンシップの極意」

シンポジウムは、山口創先生の講演からはじまりました。山口先生のご著書「子どもの脳は肌にある」は、私も読ませていただいており、その内容にずいぶん共感した本でしたので、今回の講演は、非常に楽しみにしておりました。

山口先生は、スキンシップの重要性を説いておられ、オキシトシンというホルモンの分泌との関係や、スキンシップによる心の発達や精神安定効果についてお話いただきました。中でもとりわけ興味深かったのは、オキシトシンの話でした。ベビーマッサージなどのスキンシップによって、マッサージされた側(赤ちゃん)にオキシトシンが分泌されるわけですが、実はそれと同時に施術者(お母さん)の方にも、オキシトシンの分泌は促進されるという研究結果があるそうです。

もちろん、われわれは、経験則としてこのことは知っています。ベビーマッサージをすると、赤ちゃんが気持ちよく、安定的になるだけでなく、やっている方のお母さんも、同じように気持ちよく癒され、安定的になることは、経験としては知っている方も多かったでしょう。しかし、このことを、オキシトシンの分泌の効果として学術的な文脈で聞くことが出来たのは、非常に有意義なことです。「ベビーマッサージは、赤ちゃんにとっても、お母さんにとっても、心を癒し、精神を安定させ、幸せにしてくれる営みなんですよ!」というメッセージが、精神論ではなく、実体のあるホルモン分泌としての効果として理解できるからです。

しかし、オキシトシンの分泌を促すスキンシップというのは、単なる「触る行為」ではないというのです。そこに「心」「愛情」というものが込められて、はじめてオキシトシンが分泌されるそうです。ベビーマッサージは、施術者にやってもらうのではなく、お母さんが赤ちゃんにやってあげる営みであることの根拠は、ここにあります。マッサージそのものに効果があるのではなく、愛情のこもったマッサージに、オキシトシン分泌効果があるということです。

さらに、おもしろいことに、子どもの頃に、ベビーマッサージなどによって、オキシトシン分泌を、頻繁に促されてきた子どもは、オキシトシンを分泌しやすい体質になるそうです。そして、そのオキシトシン分泌体質は、一生涯つづくのだそうです。それは、つまり、自尊感情が強く、心が安定していて、緊張状態に耐性が強く、落ち込んでも立ち直りが早い体質を得ることが出来るということです。これは、「幸せに生きやすい体質」と言えますし、ぜひ子どもに与えてあげたい体質です。

これらの内容は、われわれも「アタッチメント」の文脈で、ずっと言ってきたことですので、非常になじみ深いものでした。もう一つ、山口先生のお話の中で、われわれになじみ深い話がありました。それは、「昔ながらの子育て」を見直す視点です。山口先生は、このことを、江戸時代や明治時代の子育てを例に解説されました。幕末の江戸を訪れたイギリス人駐日公使オール・コックが、当時の江戸では、父親が子どもを抱っこする姿をあちこちで見ることができたことに驚いたといいます。夏には、お父さんはふんどし一枚で、裸の子どもを抱っこし、冬は上着の中に入れて子どもを抱っこする光景が、ありふれていたそうです。また、明治時代に日本の子育てに触れたイザベラ・バードは、子どもを抱っこしたり、おんぶしたり、手を取ったりして、自分の子どもに喜びをもって接っし、また他人の子どもにもそれなりの注意と愛情を注ぐ姿に感動したと言います。これらは、今では、忘れ去られようとしている「日本の素晴らしい子育て文化」と言えます。そうした「良きもの」は、次の世代に積極的に受け継いでいくべきだ、というメッセージが感じられました。

まさにこのことを、私は、「子育てルネッサンス」と言っています。抱っこにおんぶ、川の字で寝ること、わが子に喜びと誇りを持つこと、他人の子どもにも愛情を注ぐこと・・・こうした日本の子育て文化を、われわれは継承していかなければいけないと、改めて強く思いました。しかし、単なる懐古主義では、受け入れらません。それは「ルネッサンス」の名の通り、現代に合うような形に焼き直して、「新しいもの」として提示しなければ、ならないのだと思います。

山口先生の講演の様子をお伝えするうちに、わたし個人の思いも混ざってしまった部分がありますが、それほどに「私の思いが重なった」講演内容であったことを、最後に付けくわえさせていただきます。

 

■ 優秀実践発表

優秀実践発表

午後からは、ランチを囲んだ懇親会が行われました。ランチは、第二回全国大会からの定番「3pmさんじ」さんの彩り豊かなランチを、今年もいただきました。参加者の中には、このランチをお目当てに来られている方も多かったことと思います。

おいしいランチの後は、優秀実践発表が行われました。今年は、4名の方に発表していただきましたが、どれも非常に有意義な発表で、参加者からも「とても勉強になった!」「やる気が湧いてきた!」「自分の教室でも役立てられる」といったお声をたくさんいただきました。この優秀実践者は、活動報告をご応募いただいた方の中から、みんなで共有させていただきたいような象徴的な活動をされた方を毎年選ばせていただいています。ご自身の一年の活動のまとめとして、あるいは活動の節目の記念として、応募される方も多いようです。

 

・ 「子育て支援部門」 上原理香さん

「子育て支援部門」上原理香さん

最初の発表者は、「子育て支援部門」の受賞者の上原理香さんです。上原さんは、子どもの体操の先生をされており、赤ちゃんへの営みとして、ベビーマッサージ教室を展開されています。2009年にABMベビーマッサージ資格を取得されてから5年間、継続してベビマ教室の活動を続けてこられました。上原さんの「続ける秘訣」は一体何だったのでしょうか。

発表を聞いて私は、「続ける秘訣」に、2つのポイントがあると思いました。これは、上原さんが最後に紹介していたことですが、私は、真っ先にご紹介したいポイントです。それは、「わかりやすく明快なコンセプトの宣言」です。上原さんは、自ら決めたコンセプトを「3つのR」と表現しています。それぞれ、Relax(リラックス)・Refresh(リフレッシュ)・Return(リターン)です。「お母さんたちにリラックスしてもらい、リフレッシュしてもらい、そして何度も来てもらえる教室にしよう」このことを、まず自分に対して宣言しています。そして、毎回、教室に来たお母さんたちにも、このことを宣言しています。このように言語化し、それを伝えることによって、言葉は現実化します。

そもそも、「続ける」ためには、「本人の意志」が続くこと、そして「生徒さんの流れ」が続くこと、この二つが両立して、はじめて続けられるわけです。上原さんの場合、自分への誓いが明確であったから、本人の意志も揺らぐことなく続いたのでしょう。そして、生徒さんの流れについては、「また来たい!」と思ってもらえるくらいの満足が、新たな人を呼んできたのでしょう。このことも、「コンセプトの宣言」が起因しています。もう一つ、上原さんの教室に「生徒がいつも絶えない理由」を、見出すことが出来ました。それは、プログラムが緻密に組まれていることです。発表では、1~7の項目に分けられていましたが、そのプログラムの流れが、コンセプトとぴったり一致しているのです。それを最も象徴していたのは、ベビマの実技の前に「ママリラックス体操」が入り、最後に「ママのストレッチ」で締めくくられている点です。上原さんのコンセプトの通り、主役はママなのです。お母さんの満足度は、非常に高いことが想像できます。

最後に、もう一つ、上原さんの発表からから生まれたものをご紹介します。それは、「勇気」です。実は、上原さんは独身であり、出産経験も育児経験もありません。そんな上原さんが、ママたちの先生になるのには、大変な勇気が必要だったと思います。これについて上原さんは、「弱点だったら、それは同時にストロングポイントになるはず」と考えたとおっしゃっていました。恐らく、育児経験がない分、知識をしっかりと身につけたでしょうし、教室では、盛り上げグッズをしっかりと準備するなど、出来ることをちゃんとやられていました。その結果、お母さんたちに支持され、慕われ5年間も続けてこられています。このことは、同じように独身でベビマインストラクターをされている方や、なかなか一歩を踏み出せないでいる方の、大きな大きな励みになったと思います。

上原さん、素晴らしい活動と、意義のある発表をありがとうございました。

 

・「医療・看護部門」 板倉レディスクリニックさん

「医療・看護部門」 板倉レディスクリニックさん

続いては、団体受賞をされた板倉レディスクリニックさんで、発表は、土倉明子さんに行っていただきました。板倉レディスクリニックさんは、長野県にある産科と婦人科を擁する病院です。今回は、病院全体としての取り組みの素晴らしさを評価させていただきました。

板倉レディスクリニックさんは、「スタジオ・ボイト」という立派なスタジオが、院の建物とは別に併設されています。このスタジオは、院とは違ったもっと親しみやすい雰囲気をつくることで、妊婦さんや患者さんたちをもてなしたい、という思いが込められているそうです。ディレクターの板倉祥子さんのもと、土倉さんをはじめとするベビーマッサージインストラクター4人のほか、マタニティヨガやアフタービクスのインストラクターもいるそうです。

最も特徴的なのは、インストラクターは全員、クリニックの看護師や助産師であるということです。私は、この意味は大きいと感じています。これによって、クリニックの理念とスタジオの理念の両方を、同じ人が共有して、それぞれの役割を果たせます。もう一つ重要なのは、クリニックの看護師や助産師だからこそ、妊婦さんや患者さんとの「関係性」がすでに出来ています。そうした人から、ベビーマッサージを習えるというのは、非常に理想的な環境です。

さらに興味深かったのは、「スタジオ・ボイト」で教室をやるようになって、「自分もインストラクターになって、お母さんたちを喜ばせたい」という目標が明確になり、スタッフのスキルアップに対するモチベーションが上がったそうです。これは、団体での取り組みならではの相乗効果だと思います。

板倉レディスクリニックさんの事例において、最も重要なポイントは、「スタジオ・ボイト」が、クリニックと妊婦さんや患者さんをつなぐアタッチメントの役割を担っていることだと、私は発表を聞いて感じました。スタジオの存在が、妊婦さんや患者さんの満足や出産に対しての肯定的な気持ちを引き出し、さらにスタッフのやりがいや満足感、成長へのモチベーションも引き出しています。さらに、板倉レディスクリニックさんでは、スタジオの取り組みを、今後は地域へと広げていかれる展望だそうです。そうなれば、地域の子育て支援の核として機能し始めます。「スタジオ・ボイト」の活動を、ひろば事業として展開することも出来るかもしれません。

同様の取り組みは、産院やレディスクリニックだけでなく、小児科医院や歯科医院などでも応用できると思います。ぜひ、医療関係の方は、参考になさってください。患者さんとスタッフの両方に良い相乗効果が生まれる理想的な病院経営のモデルが、ここにあるのではないかと感じさせてくれる発表でした。

板倉レディスクリニックさん、そして、発表いただいた土倉明子さん、素晴らしい活動と、意義のある発表をありがとうございました。

 

・「アタッチメント教室部門」 高橋直美さん

「アタッチメント教室部門」 高橋直美さん

続いては、アタッチメント部門の高橋直美さんです。高橋さんは、生徒の縁を拡げ、催者との縁を拡げることで、自然と活動を拡げて現在の形を作られています。その「つなげる力」を学ばせていただきました。

高橋さんのベビマ教室は、入会金800円、レッスン1000円/回で運営されています。それだけを聞くと、特に驚きはないでしょう。しかし、これは、単発ではなく、月2回の継続レッスンを基本とする運営だと聞くと、いかがでしょう。しかも、競合がすでにいる状況でのことです。私は、すごい!と思いました。なぜなら、継続レッスンの難しさを知っているからです。私自身も、単発やチケット制などが現実的な運営方法だと考えていました。しかし、高橋さんは、実際にやっています。発表を聞いて、その秘訣がわかりました。

それは、意外にもシンプルなことでした。「(他のベビマとの)違いを伝える」「良さを伝える」そして「思いを伝える」ということを、徹底してやることです。初回は、必ず体験会に参加してもらい、「アタッチメントベビーマッサージとは・・・」、「愛着関係について・・・」、「触れ合いについて・・・」、「育児について・・・」といった背景の話をしっかりとお話されるそうです。その中で、高橋さんの「ベビマへの思い」「自分の活動の動機」などを語られるそうです。この時点で、お母さんは「高橋さんのベビマでなければイヤだ!」と思う事でしょう。

高橋さんは、この体験会に、たっぷり時間を取っており、お母さんたちの話も、じっくり聞くそうです。ですから、体験会は、基本マンツーマンか、多くても2~3人だそうです。そして、すべての人と、このような濃密な時間を持った上で、継続レッスンに入ってもらうのだそうです。体験会でお話をしたお母さんは、100%継続レッスンを申し込まれているそうです。

通常、体験会というと、レッスンに無料参加してもらうスタイルや、少し簡略化した単発レッスンを提供して、「ベビマの良さを実感してもらう」という趣旨のものが多いと思います。しかし、高橋さんの体験会は、全く趣旨が違います。体験会で「お母さんとの信頼関係を作る」ということを趣旨としているのです。

多くの皆さんは、高橋さんと同様に「思いを伝える」ことをやられていると思います。しかし、高橋さんの場合は、これについて、徹底しているのです。だから、体験会に来た時点で「お母さんとの信頼関係を作る」段階にまで関係性を深められるのです。そして、このことが、お母さんの中に、継続レッスンを受け続けるというモチベーションを生んでいるのです。そして、そのような深い関係性において行われる教室だからこそ、人が人を呼ぶ流れを生みだすのです。本当のクチコミとは、ただ良い評判が広がる事ではなく、「思い」が人を伝って広がっていく事なのだということを、改めて感じさせていただきました。私は、こうした本当のクチコミを「共感の波」と呼んでいます。高橋さんは、まさに「共感の波」を起こしている事例だと思います。

このことは、生徒さんが集まる流れだけでなく、主催者からの依頼が集まる流れにも波及しています。高橋さんは、ベビマを依頼されると、やはり生徒さんにしたのと同じように、担当者さんとお話の場を設けるそうです。すると、担当者さんも、高橋さんの「思い」に共感し、今度は、別支局や別部署あるいは別団体の担当者にクチコミをするそうです。そうして、今では、あっちこっちからベビマの依頼を頂くようになったそうです。

生徒さんからの「共感」と担当者さんからの「共感」が合さって、高橋さんの「思い」が、波のように大きく広がります。高橋さんの「共感の波」、今後も期待しています。素晴らしい活動と、意義のある発表をありがとうございました。

 

・「アタッチメント教室部門」 本郷美保さん

「アタッチメント教室部門」 本郷美保さん

今年は、もう一名アタッチメント教室部門から受賞者を選考させていただきました。本郷美保さんです。本郷さんは、なんと2014年4月に資格を取得したばかりなのです。そして、このわずか6か月で、6か所でベビマ教室を展開し、60組以上の親子を生徒さんに持つまでになっています。この初動の瞬発力は、皆さんの参考になると思います。

さて、みなさんは、「本郷さんは、どんなウルトラCを使ったのだろうか?」とお思いになったのではないでしょうか。実は、本郷さんが、やってきたことは、決してウルトラCのようなことではありませんでした。

はじめは、他の方と同様に、たった2組(うち1組は友情参加)からのスタートです。しかも、引っ越してきたばかりの人脈ゼロの土地柄で、8か所の子育て支援センターのうち、すでに5か所はベビマ教室が導入済み、市内には3か所のベビマ教室が競合として存在していました。さて、そんな中で、本郷さんは、どうやって活動を拡げていったのでしょうか?大いに興味を引きます。

私が発表から読み取ったのは、本郷さんの持っている「3つの力」です。一つ目は「めげない力」、二つ目は「タイトル&企画力」、そして3つ目は「Facebook力」です。

まず大事なのは、「めげない力」です。私が、たくさんのインストラクターの事例を見てきて思うのは、みなさんこの「めげない力」をお持ちなのです。本郷さんだけでなく、活躍している多くのインストラクターも、最初は1組や2組、それもお友達の友情参加からスタートしています。それでも、めげずに続けていると、ある時人の流れが動き始める瞬間があります。つまり、クチコミが動き始めるのです。そのポイントまで、「めげずに続ける」かどうかが「めげない力」なのです。

次に、「タイトル&企画力」です。本郷さんの教室は、こんなタイトルがつけられています。「子育てが5倍楽しくなるベビーマッサージ教室・ベビママサロンくまちゃん」こうしたちょっと気を引いたり、なんだろうと興味を持ったり、思わずクスッと笑ってしまったりするようなタイトルは、人を集める上で、想像以上に大きな力を発揮します。今回の全国大会で「おもしろいタイトルをつけるワーク」を行ったのも、このことを伝えるためです。また、おもしろいタイトルと共に、おもしろい企画のイベントを行っているのも、ポイントです。おいしいパンケーキを食べられるカフェでベビマをやってみたり、パパのベビマ教室の企画では、パパが赤ちゃんとベビマをやっている間、ママはカフェでリラックスするといったものです。こうした「ひとひねり」があるタイトルや企画というのは、思った以上に人を集める力があるのです。

最後は、「Facebook力」です。これは、昨年の優秀実践者の峰孝子さんとも共通しますが、SNSというソーシャルサービスの力を、うまくコミュニティ作りに活かしています。本郷さんの場合、教室の生徒さんとFacebook上でお友達になります。そして、教室で行ったベビマやおしゃべりの様子を写した写真を、Facebookに投稿します。(掲載の際は、許可をとります。)生徒さんにとっては、自分や子どもの写真がFacebook上に掲載されればうれしいものです。また、イベントや教室の告知なども、Facebookで行います。そうすると、生徒さんの友達にも、こうした楽しげな写真や、イベント情報や教室のスケジュールが共有されます。自分の友達が実際に通って、楽しそうにしている様子を見るわけなので、安心して、この教室に来られるわけです。これは、みなさん今日からもマネできるので是非まだ未活用の方は、「Facebook力」を発動してください。Facebookは、特に難しくはありません。始めることが大切です。ちなみに、当協会もFacebookページがあります。みなさんぜひ「いいね」して、協会ともつながってください!

最後に、本郷さん、たった6か月でここまでやり抜くのは、本当にスゴイことです。ずっとずっと、「ベビママサロンくまちゃん」を続けていってください。素晴らしい活動と、意義のある発表をありがとうございました。

 

一般社団法人日本アタッチメント育児協会
代表理事 廣島 大三

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